GLOSSARY · M&Aスキーム

M&A基本スキーム 用語集 — 13語を実務例付きで解説


中小M&Aで用いられる7つの主要スキームと、その派生・関連手法を整理します。スキームの選択は税務・許認可・契約継承・対価形態に大きく影響するため、初期検討段階で構造の特性を把握することが重要です。

最終更新: 2026-05-13 / 監修: 今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)

M&A

えむあんどえー / Mergers and Acquisitions

企業の合併(Mergers)と買収(Acquisitions)の総称。広義には会社・事業の譲渡、合併、会社分割、株式交換、株式移転、第三者割当増資、業務提携、資本提携まで含む。中小企業の事業承継手段の一つとして近年急増している。

「後継者不在の解決策としてM&Aを検討する」。中小M&Aでは株式譲渡または事業譲渡が主流。

株式譲渡

かぶしきじょうと

対象会社の株主が保有する株式を譲受人に売却することで、経営権を移転するM&A手法。会社(法人格)はそのまま継続し、株主構成のみが変わるため、会社が保有する資産・契約・許認可・従業員等は個別の承継手続きなしで引き継げる。中小M&Aで最も多用されるスキーム。

「100%株式譲渡で経営権を完全移転する」。譲渡所得課税20.315%(個人株主・申告分離)。

事業譲渡

じぎょうじょうと

会社が保有する事業(資産・契約・従業員等)を個別に他社へ売却するM&A手法。法人格は売り手側に残り、譲渡対象の資産・契約・雇用は個別承継手続きが必要。許認可は原則として再取得が必要、消費税課税対象。リスクの切り分けがしやすい一方、手続きが煩雑。

「不採算事業の事業譲渡で選択と集中を進める」。

合併

がっぺい

2社以上の会社が1社に統合されるM&A手法。吸収合併(一方が存続し他方が消滅)と新設合併(両社が消滅し新会社設立)に分かれる。包括承継のため契約・許認可は原則そのまま引き継がれるが、株主総会の特別決議が必要、簿価引継ぎが原則。

「2社合併でグループ再編を実施」。

会社分割

かいしゃぶんかつ

会社が保有する事業を別会社に分離するM&A手法。吸収分割(既存会社に事業を承継)と新設分割(新会社を設立して事業を承継)に分かれる。事業譲渡と異なり包括承継で、契約・雇用が原則そのまま引き継がれる。消費税は不課税。

「事業の一部を会社分割で切り出し、第三者へ売却(カーブアウトM&A)」。

株式交換

かぶしきこうかん

対象会社の株主から株式の全部を取得し、対価として自社株式(または現金・社債等)を交付するM&A手法。完全親子会社化を実現する。株主総会の特別決議が必要、税制適格要件を満たせば株主への課税を繰り延べ可能。

「上場会社が中堅企業を株式交換で完全子会社化」。

株式移転

かぶしきいてん

1社または複数社が完全親会社(持株会社)を新設するM&A手法。既存会社の株主は新設親会社の株主となる。経営統合・グループ再編で頻繁に用いられる。

「2社で共同株式移転を行い、共同持株会社を設立」。

第三者割当増資

だいさんしゃわりあてぞうし

特定の第三者に対して新株を発行する増資手法。経営権を維持しつつ資金調達・資本提携・救済支援を行う。買い手にとっては既存株主の希薄化と引き換えに対象会社の経営に関与する選択肢。

「事業再生局面で第三者割当増資による資本注入」。

TOB(公開買付)

てぃーおーびー / Take Over Bid

上場会社の株式を、市場外で不特定多数の株主から買い付ける制度。金融商品取引法27条の2以下で規制され、買付条件(価格・期間・予定数)を公告して公平な売却機会を提供する。買付後に株式等所有割合が30%超となる場合(2024年改正で従来の3分の1超から30%超へ)にはTOBが義務化される。

「上場子会社の完全子会社化を目的にTOBを実施」。

完全子会社化

かんぜんこがいしゃか

対象会社の発行済株式の100%を取得し、自社の完全子会社にする手法。株式譲渡・株式交換・株式移転・TOB+スクイーズアウト等の手法を組み合わせて実現する。少数株主の不在によりガバナンス・意思決定が単純化される。

「TOBで90%以上取得後、スクイーズアウトで完全子会社化」。

持株会社(ホールディングス)

もちかぶがいしゃ

他社の株式を保有することを主たる事業とする会社。事業会社を子会社化してグループ統治を担う。事業承継対策・グループ再編で活用され、株式移転で新設するケースが多い。

「持株会社化により事業承継対策とグループ統治を両立」。

資本提携

しほんていけい

完全買収・合併に至らず、少数株式の相互保有や一方による議決権の一部取得で連携を強化するスキーム。買収より柔軟・対等な関係を維持しやすく、業務提携と組み合わせて用いられる。

「25%出資の資本提携で技術連携と販売チャネル共有」。

業務提携

ぎょうむていけい

資本関係を伴わない、特定業務(販売・開発・生産等)での協力関係。契約のみで構築でき柔軟だが、関係解消も容易で拘束力は限定的。

「販売業務提携でクロスセルを実現」。

M&A基本スキーム に関するよくある質問

Q.中小M&Aで最も多用されるスキームは?
株式譲渡が圧倒的に多く、中小M&A全体の大半を占めるとされます。理由は手続きがシンプル(個別の資産・契約承継が不要)、税負担が軽い(個人株主の譲渡所得20.315%)、許認可の継承が原則そのまま行える点です。簿外債務リスクは買い手に承継される点が事業譲渡との大きな違いです。
Q.事業譲渡と会社分割の違いは?
事業譲渡は資産・契約・雇用を個別承継する取引契約、会社分割は会社法に基づく包括承継の組織再編行為です。事業譲渡は消費税課税対象で許認可も個別取得が必要ですが、対象を柔軟に選べます。会社分割は消費税不課税で契約・雇用が包括承継されますが、株主総会の特別決議や債権者保護手続きが必要です。
Q.TOB(公開買付)が義務化されるのはどんな場合ですか?
金融商品取引法上、(1)市場外で5%超の取得(5%ルール)、(2)取引方法を問わず買付後の所有割合が30%超となる場合(2024年改正で3分の1超→30%超に変更)、等にTOBが義務付けられます。著しく少数(10名以下)からの買付け等、例外規定もあります。上場会社の株式取得時には個別案件ごとに規制適用を確認する必要があります。
今井 健太郎
監修
今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)
早稲田大学政治経済学部卒。野村総合研究所を経て、2016年に株式会社KI Strategyを設立。M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス(BDD/ITDD)、PMI支援を専門とする。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。プロフィール詳細 →

用語の意味は分かった。次は実務へ。

事業承継・M&Aの具体的な進め方は、無料相談で個別にご相談ください。
秘密厳守、初回相談無料、全国対応。

無料相談を申し込む 企業価値を3分で査定する