GLOSSARY · M&A税務

税務・会計 用語集 — 20語を実務例付きで解説


M&A・事業承継に関連する税務・会計用語を整理します。実際の税務設計は税理士との詳細協議が不可欠です。

最終更新: 2026-05-13 / 監修: 今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)

譲渡所得

じょうとしょとく / Capital Gain

資産(株式・不動産等)の譲渡で生じた所得。個人株主の上場株式・非上場株式の譲渡所得は申告分離課税で、合計税率20.315%(所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315%)。計算式: 譲渡所得 = 譲渡対価 − 取得費 − 譲渡費用。

「株式譲渡対価5億円・取得費1千万円なら譲渡所得4.9億円、税額約1億円」。

申告分離課税

しんこくぶんりかぜい

他の所得(給与・事業所得等)と区分して税額を計算する課税方式。上場株式・非上場株式の譲渡所得、上場株式配当(選択)等が対象。累進税率ではなく一律税率(株式譲渡所得は20.315%)が適用される。

「個人株主の株式譲渡所得は申告分離課税で20.315%」。

取得費

しゅとくひ / Cost Basis

株式を取得した時点での金額。創業者の場合は資本金の払込額、相続・贈与で取得した場合は被相続人・贈与者の取得費を引継ぎ。取得費が不明な場合は譲渡対価の5%を概算取得費として控除可能(5%ルール)。

「創業時の資本金1千万円を取得費として計上」。

譲渡費用

じょうとひよう

譲渡所得計算で譲渡対価から控除できる、譲渡実行に直接要した費用。仲介手数料、印紙税、登記費用、譲渡のための専門家報酬等。譲渡所得 = 譲渡対価 − 取得費 − 譲渡費用。

「仲介手数料3千万円・弁護士費用500万円を譲渡費用として控除」。

役員退職慰労金

やくいんたいしょくいろうきん / Director Retirement Allowance

オーナー経営者が役員退任時に会社から受け取る退職慰労金。退職所得として、退職所得控除+1/2課税の優遇を受けられる。株式譲渡と組み合わせることで、譲渡対価の一部を退職金として受領するスキームによる税負担最適化が可能。

「株式譲渡対価5億円のうち1.5億円を役員退職慰労金として受領、税負担を最適化」。

退職所得

たいしょくしょとく / Retirement Income

退職金として受け取った所得。「(退職金 − 退職所得控除) × 1/2」で課税対象額を計算する優遇課税。他の所得と分離して課税される(分離課税)ため、累進税率の影響を受けにくい。

「役員退職慰労金1億円・退職所得控除2千万円なら、課税退職所得4千万円」。

退職所得控除

たいしょくしょとくこうじょ

退職所得の計算で控除される金額。勤続20年以下: 40万円 × 勤続年数(最低80万円)、勤続20年超: 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20)。勤続1年未満の端数は1年に切り上げて計算。

「勤続30年の退職金なら控除額1,500万円(800万 + 70万×10)」。

功績倍率法

こうせきばいりつほう / Merit Ratio Method

役員退職慰労金の適正額算定方法の一つ。「最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率」で算定する。代表取締役の功績倍率は2〜3倍が税務上認められる合理的範囲とされる(裁判例・税務通達ベース)。不相当に高額な役員退職金は損金否認リスクがある。

「最終報酬月額200万円・勤続30年・功績倍率2.5倍で退職金1.5億円」。

事業承継税制

じぎょうしょうけいぜいせい / Business Succession Tax System

中小企業の非上場株式を後継者に贈与・相続する際に、贈与税・相続税の納税を猶予する制度。特例措置と一般措置の2類型。特例措置は納税猶予割合100%(一般措置は最大2/3)、後継者最大3名(一般措置は1名)、雇用要件緩和等の優遇あり。

「特例措置を活用し、後継者への株式贈与の贈与税を全額納税猶予」。

事業承継税制(特例措置)

とくれいそち

2018年税制改正で導入された期限付き制度。納税猶予割合100%、後継者最大3名、雇用要件緩和等の優遇。「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があり、提出期限は2027年3月31日まで(2024年税制改正で延長)、贈与・相続実行期限は2027年12月31日。

「特例承継計画を2026年中に提出し、2027年中に株式贈与を実行」。

事業承継税制(一般措置)

いっぱんそち

事業承継税制の恒久措置。納税猶予割合は対象株式数の最大2/3、後継者1名、雇用要件8割維持必須等、特例措置より要件が厳しい。特例承継計画の提出は不要。特例措置の期限経過後も利用できる。

「特例措置の期限後、一般措置で事業承継を進める」。

特例承継計画

とくれいしょうけいけいかく

事業承継税制の特例措置を受けるために都道府県に提出する計画書。後継者・承継時期・経営見通し等を記載し、認定経営革新等支援機関(税理士・弁護士・金融機関等)の所見を添付する。提出期限は2027年3月31日(2024年改正で延長)。

「特例承継計画を税理士監修で作成、2026年内に都道府県へ提出」。

納税猶予

のうぜいゆうよ / Tax Deferral

一定要件下で税の支払いを繰り延べる制度。事業承継税制では、後継者が一定期間(5年間)事業を継続し雇用維持等の要件を満たす場合に、贈与税・相続税の納税を猶予する。最終的に後継者が次の後継者へ承継した時点等で免除される。

「事業承継税制で贈与税1億円の納税猶予を受ける」。

繰越欠損金

くりこしけっそんきん / Loss Carryforward

過去の事業年度で生じた税務上の損失で、将来の所得と相殺できる金額。中小法人は10年間繰越可能(中小法人以外は7年間、平成30年4月以後発生分は10年)。事業譲渡では原則として承継できず、合併・会社分割では適格要件下で承継可能。

「繰越欠損金2億円を翌期以降の利益と相殺、税負担を軽減」。

適格組織再編

てきかくそしきさいへん / Tax-Qualified Reorganization

合併・会社分割・株式交換・株式移転等で、税制適格要件を満たすことで税務上の譲渡損益を繰り延べられる組織再編。要件は完全支配関係・支配関係・共同事業要件等に応じて異なる。繰越欠損金の承継可否にも影響する。

「グループ内会社分割を適格要件下で実施、譲渡損益を繰り延べ」。

みなし配当

みなしはいとう / Deemed Dividend

形式的には配当でなくとも、税法上は配当とみなされる所得。自己株式取得時、合併・会社分割時の対価のうち資本金等を超える部分等が該当する。総合課税(配当所得)の対象となり、株主にとって申告分離課税の譲渡所得よりも税率が高くなることが多い。

「自己株式取得時、譲渡対価のうち資本金等を超える部分はみなし配当として総合課税」。

資産調整勘定

しさんちょうせいかんじょう

非適格組織再編・事業譲渡における、税務上ののれんに相当する勘定。譲渡対価が引き継ぎ純資産の時価を上回る部分。5年間で均等償却して損金算入できる。会計上ののれんとは計上要件・償却年数が異なる。

「事業譲渡で資産調整勘定3億円を5年で均等償却」。

のれん償却

のれんしょうきゃく / Goodwill Amortization

会計上ののれんを期間配分して費用化する処理。日本基準では20年以内に定額償却(IFRSは非償却で減損テストのみ)。償却費は会計上の利益を圧迫するが、税務上の損金算入可否は別途検討(資産調整勘定とは異なる)。

「のれん3億円を10年で定額償却、年3,000万円の償却費」。

連結納税 / グループ通算

れんけつのうぜい / Consolidated Tax Filing

グループ内の複数法人を一体として税計算する制度。2022年4月以降は連結納税制度が廃止され「グループ通算制度」に移行。親子法人間で所得・欠損を通算でき、グループ全体の税負担を最適化できる。M&A後のグループ再編で導入を検討するケースが多い。

「買収後、グループ通算制度を導入して欠損子会社の損失を活用」。

印紙税

いんしぜい / Stamp Duty

課税文書(契約書等)に課される税。M&A関連では、株式譲渡契約書は不課税、事業譲渡契約書は契約金額に応じて200円〜60万円(10億円超は60万円)が課税される。仲介契約・FA契約は1通あたり1万円が一般的。

「事業譲渡契約書5億円の印紙税は10万円」。

税務・会計 に関するよくある質問

Q.株式譲渡で個人株主に課される税金の総額は?
個人株主が株式を譲渡した場合、譲渡所得(譲渡対価 − 取得費 − 譲渡費用)に対して合計20.315%(所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315%)の申告分離課税が課されます。譲渡対価1億円・取得費5百万円・譲渡費用5百万円なら譲渡所得9千万円、税額約1,828万円。役員退職慰労金スキームを組み合わせることで税負担をさらに軽減できる可能性があります。
Q.事業承継税制の特例措置はいつまで使える?
特例承継計画の都道府県への提出期限は2027年3月31日まで(2024年税制改正で延長)。実際の贈与・相続の実行期限は2027年12月31日です。一般措置は恒久措置で期限はありませんが、納税猶予割合(2/3 vs 100%)・後継者人数(1名 vs 最大3名)・雇用要件等で特例措置の方が大幅に有利なため、要件を満たす場合は特例措置の活用を優先するのが一般的です。
Q.役員退職慰労金の損金算入で適正額の判断基準は?
実務的には「功績倍率法(最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率)」で算定し、代表取締役の功績倍率は2〜3倍が税務上の合理的範囲とされています(裁判例・税務通達ベース)。著しく高額な役員退職金は「不相当に高額」として損金否認リスクがあるため、適正額の根拠資料(類似企業比較・功績倍率の算定根拠等)を整備した上で、株主総会決議を経ることが重要です。具体的なスキーム設計は事前に税理士に相談してください。
今井 健太郎
監修
今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)
早稲田大学政治経済学部卒。野村総合研究所を経て、2016年に株式会社KI Strategyを設立。M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス(BDD/ITDD)、PMI支援を専門とする。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。プロフィール詳細 →

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