GLOSSARY · M&A費用構造

手数料・料金 用語集 — 13語を実務例付きで解説


中小M&Aの仲介・FA手数料の主要用語を整理します。手数料体系の全体像はM&A手数料の相場とレーマン方式もご参照ください。

最終更新: 2026-05-13 / 監修: 今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)

レーマン方式

れーまんほうしき / Lehman Formula

M&A仲介・FAの成功報酬計算で広く用いられる段階制料率。取引金額を5億円・10億円・50億円・100億円で区切り、それぞれの階層に5%・4%・3%・2%・1%の料率を乗じて合算する。「取引金額×料率」の単純計算ではない点に注意。

「取引金額10億円なら5億×5%+5億×4%=4,500万円」。

月額報酬(リテーナー)

げつがくほうしゅう / Monthly Retainer

M&A業務遂行期間中に毎月支払う固定報酬。FAは月額50〜200万円/月の月額制が中心。仲介では廃止トレンドが進み、ゼロが一般化。アドバイザーの活動費としての性格を持つ。

「FA起用で月額100万円のリテーナーを6ヶ月支払い」。

中間報酬(マイルストーンフィー)

ちゅうかんほうしゅう / Milestone Fee

基本合意書(LOI)締結時に発生する中間段階の報酬。成功報酬の10〜20%、または定額100〜500万円が業界相場。完全成功報酬制では無料。不成約でも返金されないのが一般的。

「基本合意時に中間報酬として成功報酬の10%を前払い」。

成功報酬

せいこうほうしゅう / Success Fee

M&A最終契約締結・クロージング時に発生する報酬。レーマン方式で譲渡価額の1〜5%が業界標準。「成功」の定義(最終契約締結時 / クロージング時 / 取引完了時)は契約により異なるため、業務委託契約書での確認が必須。

「成功報酬は譲渡価額のレーマン方式(株価ベース)」。

完全成功報酬制

かんぜんせいこうほうしゅうせい / Full Success Fee

着手金・月額報酬・中間報酬がすべて無料で、成約時の成功報酬のみが発生する料金体系。経営者の初期負担をゼロにできる一方、最低成功報酬の設定により小規模案件では実効料率が割高になることがある。

「完全成功報酬制で経営者の心理的負担を軽減」。

最低成功報酬

さいていせいこうほうしゅう / Minimum Success Fee

成功報酬の下限額。中小M&A業界では税抜1,000〜2,500万円のレンジが一般的。譲渡価額が小さい案件では、レーマン方式での試算より最低成功報酬がそのまま手数料となり、実効料率が10〜20%にまで上昇するケースがある。

「最低成功報酬2,000万円(税抜)の設定なら、1億円案件の実効料率は20%」。

テール条項

てーるじょうこう / Tail Clause

M&A仲介・FA契約終了後も、一定期間内に成約した場合に成功報酬請求権が残る条項。仲介会社が紹介した買い手と契約終了後に直接成約した場合のフリーライド防止が目的。中小M&Aガイドライン第3版(2024年改訂)では、対象を契約期間中に提示した買い手候補のみに限定し、期間も合理的範囲(実務的には契約終了後概ね2〜3年が目安)に留めることが求められる。

「テール条項の期間2年・対象は契約期間中提示候補のみで合意」。

株価レーマン方式

かぶかれーまんほうしき

レーマン方式の取引金額を「株式譲渡対価(株価)」のみで計算する基準。3つの計算基準(株価/企業価値/移動総資産)の中で売り手に最も有利で手数料が最小。

「株価レーマン方式採用で、譲渡対価3億円なら成功報酬1,500万円」。

企業価値レーマン方式

きぎょうかちれーまんほうしき

レーマン方式の取引金額を「株価 + 有利子負債」(=企業価値、EV)で計算する基準。株価レーマンと移動総資産レーマンの中間。

「企業価値レーマン方式採用、株価3億円・有利子負債2億円なら、取引金額5億円の料率適用」。

移動総資産レーマン方式

いどうそうしさんれーまんほうしき

レーマン方式の取引金額を「株価 + 負債総額(買掛金等を含む全負債)」で計算する基準。3つの計算基準の中で売り手にとって最も不利で手数料が最大。負債の多い会社では株価レーマンの2〜3倍の手数料になることがある。

「移動総資産レーマン方式の場合、負債総額5億円の会社なら取引金額が大幅に膨らむ」。

両手取引

りょうてとりひき / Dual Representation

M&A仲介が売り手・買い手の双方から手数料を受領する取引形態。日本の中小M&A仲介の主流。利益相反リスクがあるため、中小M&Aガイドライン第3版では双方への利益相反説明と書面同意が義務付けられる。

「両手取引の仲介会社では、売り手・買い手双方からレーマン方式の手数料を受領」。

片手取引

かたてとりひき / Sole Representation

FA(フィナンシャル・アドバイザー)が売り手 *または* 買い手の一方の代理人として、その依頼者の利益最大化を専属で支援する取引形態。利益相反リスクが低いが、料率水準は仲介と同等以上になる傾向がある。

「中堅M&A案件で売り手専属FAを起用、片手取引で利益相反を回避」。

手数料・料金 に関するよくある質問

Q.レーマン方式の3つの計算基準のうち、売り手はどれを選ぶべき?
売り手の手取り最大化の観点では、株価ベースが最も有利です。同じ案件でも、株価ベースと移動総資産ベースで手数料が2〜3倍変わることがあります。中小M&Aガイドライン第3版(2024年改訂)では、計算基準の事前明示が支援機関の遵守事項として明記されており、契約締結前に必ずどの基準を採用するか文書で確認することが推奨されます。
Q.完全成功報酬制は必ずお得?
案件規模により判断が分かれます。譲渡価額が5億円以上の中堅案件では完全成功報酬制が経営者の心理的負担を下げて有利な場合が多い一方、譲渡価額1〜2億円程度の小規模案件では、最低成功報酬(業界相場 税抜1,000〜2,500万円)がそのまま手数料となり、レーマン方式での試算より割高になることがあります。最低成功報酬の水準を契約前に必ず確認しましょう。
Q.テール条項で注意すべき点は?
(1)期間(合理的範囲 = 実務的には2〜3年が目安)、(2)対象(契約期間中に提示した買い手候補のみが望ましい)、(3)成功報酬の発生条件、を契約締結前に確認することが必須です。過去には期間が5〜10年と長期に設定され売り手が不利になるケースがありましたが、中小M&Aガイドライン第3版(2024年改訂)により合理的範囲への限定が明示されました。
今井 健太郎
監修
今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)
早稲田大学政治経済学部卒。野村総合研究所を経て、2016年に株式会社KI Strategyを設立。M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス(BDD/ITDD)、PMI支援を専門とする。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。プロフィール詳細 →

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