EV(事業価値・企業価値)
事業全体の価値を示す指標。計算式は「EV = 株式時価総額 + 有利子負債 − 現預金 − 非事業用資産」。株主・債権者の双方が請求できる価値の合計を示し、EV/EBITDA倍率法等の中核指標として用いられる。
中小M&Aの企業価値算定で用いられる用語を、計算式とともに整理します。詳細な手法解説は企業価値算定の3手法もご参照ください。
事業全体の価値を示す指標。計算式は「EV = 株式時価総額 + 有利子負債 − 現預金 − 非事業用資産」。株主・債権者の双方が請求できる価値の合計を示し、EV/EBITDA倍率法等の中核指標として用いられる。
利払前・税引前・償却前利益。簡易計算では「営業利益 + 減価償却費」。設備投資の大小や資本構成・税制の違いを除いた本業のキャッシュ創出力を示す指標で、業種・規模が異なる企業間の比較を容易にする。
EVをEBITDAで除した倍率。事業価値が年間EBITDAの何倍に評価されているかを示し、簡易的な投資回収期間の代理指標としても用いられる。業種別レンジは中小M&Aで2〜8倍程度(IT・医療は高め、製造・飲食は低め)、上場全業種中央値は約7倍(2024年データ)。
「企業価値 = 時価純資産 + 営業利益 × 年数(中小M&A実務で2〜5年)」で算定する中小M&A特有の手法。シンプルで経営者に直感的、貸借対照表と損益計算書から計算可能。ファイナンス理論的根拠は薄く、買い手の投資回収期待と売り手の希望価額の合意点として実務的に普及。
対象会社の将来フリーキャッシュフロー(FCF)を予測し、WACC(加重平均資本コスト)で現在価値に割り引いて事業価値を算定する手法。理論的に最も正確とされるが、将来予測の主観性が高く、割引率1〜2%の変動で評価額が数十%動くため、中小M&Aでは補助的位置付け。
債権者と株主の要求利回りを資本構成比で加重平均した割引率。計算式は「WACC = E/(D+E)×rE + D/(D+E)×rD×(1−t)」。中小企業の評価では流動性・規模リスクのサイズプレミアムを3〜10%加算するのが一般的で、実務的なレンジは7〜15%。
株主資本コストを「リスクフリーレート + β × マーケットリスクプレミアム」で算定するモデル。10年国債利回り(Rf)、類似上場銘柄のβ、マーケットリスクプレミアム5〜7%が一般的な前提。中小M&Aでは別途サイズプレミアムを加算する。
個別銘柄の市場感応度を示す指標。市場全体が1%動いた時に当該銘柄が何%動くかを示す。β=1なら市場と同水準、β=1.5なら市場の1.5倍の変動率。非上場企業のβは類似上場企業から推計する。
「税引後営業利益 + 減価償却費 − 設備投資 ± 運転資本増減」で算定する、事業から生み出される自由に使えるキャッシュフロー。DCF法の評価対象として用いられる。
DCF法で予測期間終了後の継続価値。「TV = FCFn+1 ÷ (WACC − g)」のゴードン成長モデルで算定するのが一般的(gは永久成長率)。DCF評価額の50〜80%を占めることが多い重要要素。
DCF法のターミナルバリュー算定で用いる、予測期間終了後の永続成長率。長期GDP成長率・インフレ率を参考に0〜2%で設定するのが一般的。WACCを上回ってはならない(数学的に成立しない)制約がある。
EV/EBITDA、PER、PBR等の倍率を類似上場企業・類似取引から導出し、対象会社の指標値に乗じて企業価値を算定する手法。マーケットアプローチの代表手法で、客観性が高く中小M&A実務の主役の一つ。
株価を1株当たり純利益(EPS)で除した倍率。「株価が利益の何倍で評価されているか」を示す。上場企業評価で広く使われるが、M&A実務では資本構成・税制の影響を受けないEV/EBITDAが好まれる。
株価を1株当たり純資産(BPS)で除した倍率。資産価値に対する評価倍率を示す。資産集約型業種(不動産・銀行等)で活用されるが、収益性を反映しないため事業会社の評価では補助的位置付け。
M&Aで譲渡対価が取得した純資産の時価を上回る差額。買い手の取得時に無形固定資産として計上される。日本基準では原則20年以内に定額償却(IFRSは原則非償却で減損テスト)。会計上ののれんと税務上の資産調整勘定は計上要件が異なる。
M&Aによる「1+1>2」の付加価値効果。コストシナジー(重複費用削減・調達統合)、レベニューシナジー(クロスセル・顧客基盤拡大)、財務シナジー(資金調達コスト低減)等。買い手が想定するシナジー額がプレミアム支払いの原資となる。
「時価純資産 = 時価資産 − 時価負債」で企業価値を算定するコストアプローチの代表手法。事業の収益性を反映しないため、清算予定企業・持株会社・赤字企業・創業間もない企業の評価に向く。中小M&Aでは下限値の参照に用いられる。
貸借対照表上の純資産(簿価)を時価ベースに修正したもの。土地・有価証券の含み損益、退職給付債務、簿外債務、不良在庫等を反映する。年買法・純資産法の計算基礎。
簿価純資産に資産・負債の時価評価差額を加味して企業価値を算定する手法。純資産法の精緻化版で、清算価値ではなく継続前提での再評価を行う点が清算価値法と異なる。
将来配当の現在価値で株式価値を算定する手法。少数株主向け(同族会社の非上場株式評価で国税庁が定める方式の一つ)。経営権を持たない株主の評価としては合理的だが、支配株主の評価には用いない。
国税庁が非上場株式評価で定める方式の一つ。類似業種の上場企業の株価・配当・利益・純資産を基準に、対象会社の指標と比較して評価額を算定する。事業承継税制の適用判定や相続税評価で用いられる。
国税庁の非上場株式評価方式の一つ。会社の純資産(時価評価)を発行済株式数で除して1株当たり評価額を算定する。資産価値が大きい会社の相続税評価で用いられる。
決算書上の営業利益・EBITDAを、役員報酬・節税目的の私的経費・一時要因・関連会社取引等で正規化した収益力。年買法・EV/EBITDA倍率法で評価対象とすべき本来の利益。中小M&AのQofE分析の中核。
取引価格が公正価値(フェアバリュー)を上回る部分。買い手のシナジー期待や経営権取得対価として支払われる。上場会社のTOBプレミアムは過去数ヶ月株価の平均に対して20〜40%が一般的な水準。
経営権取得に伴うプレミアム。対象会社の経営方針決定・取締役選任・配当政策決定権を獲得することの対価。少数株主の株式評価には織り込まれない。
少数株主が保有する株式の評価で、経営権を持たないことを理由とするディスカウント。コントロールプレミアムの裏返しの概念。
中小企業の評価で、上場企業に比べて流動性・規模リスクが高いことを理由とする追加リスクプレミアム。WACC算定で株主資本コストに3〜10%加算するのが一般的。
非上場株式の評価で、市場での売却・換金が困難なことを理由とするディスカウント。中小M&Aでの評価倍率が上場企業より低くなる主因の一つ。
業種ごとに観察されるEV/EBITDA倍率・PER倍率等のレンジ。中小M&AではIT・SaaS 4〜8倍、医療・介護 4〜8倍、製造 2〜4倍、建設 2〜5倍、小売・EC 2〜6倍、飲食・サービス 2〜4倍、物流 3〜5倍、卸売 2〜4倍、教育 3〜6倍が目安。