GLOSSARY · M&Aプロセス

プロセス・段階 用語集 — 14語を実務例付きで解説


M&Aの検討開始からクロージングまでの各プロセス段階の用語を整理します。全体の流れは株式譲渡の流れもご参照ください。

最終更新: 2026-05-13 / 監修: 今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)

ノンネーム / ノンネームシート

のんねーむ / Non-name Sheet, Teaser

会社名・所在地等を伏せた、業種・地域・規模・概要のみを記載した1〜2枚の匿名概要資料。M&A検討の初期段階で買い手候補に提示し、関心度を測る。社名特定リスクなく多数の候補にアプローチできる。米欧式表現では「ティーザー」と呼ぶ。

「ノンネームシートを20社の買い手候補に提示、6社から関心表明」。

ティーザー

てぃーざー / Teaser

ノンネームシートと同義(米欧式表現)。買い手候補に最初に提示する匿名のティーザー資料で、関心を引くマーケティング機能を持つ。クロスボーダーM&Aや外資系FA起用案件では「ティーザー」表現が一般的。

「外資系FAがティーザーを北米・欧州の戦略買い手30社に配信」。

IM(インフォメーション・メモランダム)

あいえむ / Information Memorandum

売却対象企業の事業内容・市場ポジション・財務・戦略・将来計画・譲渡条件案等を詳細に記載した売り手側資料。NDA締結後の買い手候補に開示される。中小M&Aでも30〜80ページ規模、上場企業M&Aでは100〜200ページに及ぶ。

「IM作成・配布で買い手候補10社にNDA締結後の詳細情報を提供」。

ロングリスト

ろんぐりすと / Longlist

M&A検討初期に作成する、買い手候補(または売却対象候補)の幅広いリスト。50〜200社程度を含むことが多い。業種・規模・財務余力・戦略的フィット等の基準で絞り込んでショートリスト化する。

「ロングリスト150社を作成、戦略的フィットで30社のショートリストへ」。

ショートリスト

しょーとりすと / Shortlist

ロングリストから絞り込んだ、実際にアプローチする買い手候補(または売却対象候補)の絞り込みリスト。10〜30社程度。アプローチ優先順位を付けて、ノンネーム提示・トップ面談へと進める。

「ショートリスト20社にノンネーム提示、5社からLOI受領」。

スクリーニング

すくりーにんぐ / Screening

買い手候補(または売却対象候補)を一定の基準で絞り込む作業。業種・規模・地域・財務余力・戦略目標・過去の取引実績・経営者の意向等を基準にする。ロングリスト→ショートリストの絞り込みプロセス。

「スクリーニングで戦略的フィット・財務余力・買収意向の3軸で評価」。

ノンバインディング・オファー

のんばいんでぃんぐおふぁー / Non-binding Offer

拘束力のない買付意向表明。LOI(意向表明書)の中でも、譲渡対価や主要条件を提示するが法的に拘束されない形式。買い手選定の初期スクリーニングで活用される。

「3社からノンバインディング・オファーを受領し、2社にDD機会を提供」。

バインディング・オファー

ばいんでぃんぐおふぁー / Binding Offer

法的拘束力のある買付申込。DD完了後・SPA交渉直前の段階で提示される。一定の条件下でクロージングまで進む義務を伴うため、買い手側のコミットメントが強い。

「DD完了後、買い手からバインディング・オファーを受領」。

最終契約

さいしゅうけいやく / Definitive Agreement

DDの結果を踏まえて譲渡対価・条件を確定し、SPA(または APA)を締結する段階。法的拘束力を持つ本契約で、表明保証・誓約事項・補償条項・クロージング条件等を詳細に規定。締結後はクロージング条件の充足を経てクロージングへ進む。

「DD完了後、最終契約(SPA)を締結」。

クロージング

くろーじんぐ / Closing

最終契約(SPA)で合意した条件をすべて履行し、株式の引き渡し・代金決済・経営権移転を完了する最終段階。譲渡承認・株主名簿書換・代金決済・印鑑類引渡し・経営者保証解除等を1〜数日内に集中実施する。クロージング後はPMIへ移行。

「全クロージング条件を充足し、Day1にクロージングを完了」。

ポストクロージング

ぽすとくろーじんぐ / Post-Closing

クロージング後の対応期間。役員変更登記(クロージングから2週間以内)、取引先・銀行への通知、経営者保証解除手続き、PMI開始、補償期間中の表明保証違反対応等を行う。

「ポストクロージングで役員変更登記を完了、PMI100日プランをキックオフ」。

ノンネームクリア

のんねーむくりあ

ノンネーム情報を含む対象会社の概要情報を、特定の買い手候補に開示する許可を売り手から得る手続き。中小M&Aガイドライン第3版(2024年改訂)で規律が明確化された。買い手候補の競合性・情報漏洩リスクを評価し、慎重に判断する。

「同業上場企業からの問い合わせには、ノンネームクリアの売り手承認を経て対応」。

独占交渉期間

どくせんこうしょうきかん / Exclusivity Period

基本合意後の一定期間、売り手が他の買い手候補と交渉しないことを約束する期間。買い手のDD投資のインセンティブを保護する。期間1〜3ヶ月が一般的。期間満了までに最終契約に至らない場合は、他候補との交渉が再開可能。

「独占交渉期間2ヶ月を設定、DD・SPA交渉に集中」。

プロセス・段階 に関するよくある質問

Q.ノンネームシートに記載する情報の粒度は?
業種・地域(県単位)・売上規模(レンジ)・従業員数(レンジ)・主要事業概要・譲渡希望条件の概要、程度に留めます。具体的な売上額、主要取引先名、社名特定可能な詳細は記載しません。「特定地域の業界トップシェア」「特定の上場企業との長期取引あり」等の記述も、社名特定の手がかりになるため避けるのが基本です。中小M&Aガイドライン第3版(2024年改訂)でも、ノンネームクリア・対外開示の規律が明示されています。
Q.ロングリスト→ショートリストの絞り込み基準は?
(1)業種・事業の戦略的フィット、(2)対象規模に対する財務余力(買収可能性)、(3)過去のM&A実績(買収意向の蓋然性)、(4)地理的フィット、(5)業界内ポジション(競合性)、(6)スケジュール感(早期に動ける買い手か)、の6軸で評価するのが一般的です。各軸を3〜5段階で評価し、ヒートマップで可視化することで、優先順位の高い10〜30社程度に絞り込みます。
Q.M&Aプロセス全体の標準的な期間は?
中小M&Aの一般的な期間は検討開始からクロージングまで6〜12ヶ月です。内訳: ①意思決定・アドバイザー選定 1〜2ヶ月、②IM作成・売却準備 1〜2ヶ月、③買い手探索・ノンネーム提示 2〜4ヶ月、④基本合意までの交渉 1ヶ月、⑤DD 1〜2ヶ月、⑥最終契約交渉 1ヶ月、⑦クロージング 1ヶ月。事前準備に時間をかけるほど後半工程が短縮されます。
今井 健太郎
監修
今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)
早稲田大学政治経済学部卒。野村総合研究所を経て、2016年に株式会社KI Strategyを設立。M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス(BDD/ITDD)、PMI支援を専門とする。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。プロフィール詳細 →

用語の意味は分かった。次は実務へ。

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