GLOSSARY · 買収後統合

PMI・統合 用語集 — 12語を実務例付きで解説


M&Aの成否を決める買収後統合(PMI)に関する用語を整理します。具体的な支援内容はDD・PMI支援もご参照ください。

最終更新: 2026-05-13 / 監修: 今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)

PMI(買収後統合)

ぴーえむあい / Post-Merger Integration

M&A実行後に、買い手と対象会社を統合し、想定シナジーを実現するための活動。経営方針の統一、組織・人事制度の融合、業務プロセス・ITシステムの統合、文化統合等を含む。「M&Aの成功はPMIで決まる」とされるほど重要な工程。

「クロージング後100日で重要PMI施策を実行、シナジー実現を加速」。

Day1

でいわん / Day One

M&Aのクロージング当日。新しい所有関係・経営体制の発足日。社員・取引先・顧客への公表、初日のオペレーション継続、緊急時対応体制の確立等、混乱なく業務継続できる準備が重要。

「Day1に向けた社員向けコミュニケーション計画とFAQを準備」。

100日プラン

ひゃくにちぷらん / 100-Day Plan

クロージング後100日間に実行する優先施策のロードマップ。クイックウィン(短期で実現可能な施策)、シナジー実現の初期施策、組織・ガバナンス整備、リテンション施策等を含む。PMIの最初期フェーズで最も重要な期間。

「100日プランで重複費用削減(年間3千万円)と主要顧客への挨拶完了」。

シナジー実現

しなじーじつげん / Synergy Realization

M&A検討時に想定したシナジー(コストシナジー・レベニューシナジー・財務シナジー)を実際に発現させる取り組み。実現には1〜3年を要することが多く、定量化・KPI化・進捗モニタリングが必須。「シナジー想定の50〜70%しか実現しない」と言われるほど難易度が高い。

「想定シナジー年5億円に対し、PMI3年で実現率70%(3.5億円)」。

文化統合

ぶんかとうごう / Cultural Integration

買い手と対象会社の組織文化・価値観・働き方を融合させる取り組み。PMI失敗の最大要因の一つとされ、特にクロスボーダーM&Aや異業種M&Aで重要。経営層の継続的コミュニケーション、共通の価値観の明文化、相互理解促進プログラム等で進める。

「文化統合プログラムで両社のミッション・バリューを再定義」。

TSA(移行サービス契約)

てぃーえすえー / Transition Service Agreement

M&A後、売り手が対象会社に対して一定期間(通常3〜12ヶ月)、特定業務(経理・人事・IT・物流等)を継続提供する契約。カーブアウト案件で頻繁に用いられ、対象会社が独立した運営体制を構築するまでのつなぎ期間をカバーする。

「カーブアウト後6ヶ月のTSAで売り手側の経理システムを継続利用」。

カーブアウト

かーぶあうと / Carve-out

親会社が保有する一部事業を切り出し、独立会社化または他社へ売却するM&A手法。会社分割・事業譲渡を用いる。切り出し対象事業の独立採算性確立・共通機能の分離・必要システム移行・人員配置等の準備が複雑で、PMIと並ぶ難所。

「親会社からカーブアウトで独立、TSAで6ヶ月の経理サポートを継続」。

リテンション

りてんしょん / Retention

M&A後にキー人材の流出を防ぐ施策。リテンションボーナス(残留報奨金)、ストックオプション、ポジション保証、キャリアパス提示等を組み合わせる。技術・営業・経営層のキー人材流出はM&A価値の毀損に直結するため、特にIT・サービス業のM&Aで重要。

「キー人材5名にリテンションボーナス(2年勤続で年収50%相当)を付与」。

キーパーソンリスク

きーぱーそんりすく / Key Person Risk

特定の人物(創業者・キー営業・キー技術者)への過度な依存により、その人物の離脱が事業価値を大きく毀損するリスク。中小企業M&Aで頻発する論点で、DD段階での識別とリテンション設計、表明保証・誓約事項での縛りが対策となる。

「DDでキー営業3名への売上集中リスクを発見、リテンション契約を必須化」。

システム統合

しすてむとうごう / System Integration

買い手・対象会社のITシステム(ERP・CRM・販売管理・会計等)を統合する取り組み。PMIの中で最もコスト・期間がかかる作業の一つ(6ヶ月〜3年)。買い手側システムへの片寄せ、対象会社側を継続、新規システム導入のいずれかを選択する。

「システム統合計画で対象会社のERPを買い手側に統合、移行期間1年」。

コミュニケーション計画

こみゅにけーしょんけいかく / Communication Plan

M&A発表・クロージング・PMI過程で、社員・取引先・顧客・地域・株主等の各ステークホルダーへの情報開示・説明を計画的に行うプラン。説明不足は不信感・離反・離職に直結するため、Day1・100日・1年の各タイミングで体系的な発信が必要。

「コミュニケーション計画で社員説明会・取引先訪問・FAQの3点セットを準備」。

クイックウィン

くいっくうぃん / Quick Win

PMI初期に短期間で実現できる成果・シナジー施策。重複費用の整理、共同調達、共通顧客のクロスセル等が典型例。社内外への成果アピールと、PMI推進のモメンタム維持に重要な役割を果たす。

「クイックウィンとして重複システム1本化・共同調達3千万円のコスト削減を実現」。

PMI・統合 に関するよくある質問

Q.PMIの成否を決める最大の要因は?
①100日プランの設計と実行力、②キー人材のリテンション、③文化統合(特にクロスボーダー・異業種)、④コミュニケーション計画の徹底、の4点が成否を分けるとされます。「シナジー想定の50〜70%しか実現しない」という統計があるほどPMIは難易度が高く、買収段階からPMIを見据えた設計(DD段階でのPMIリスク識別、SPAでのリテンション条項、TSAの設計等)が成功確率を大きく左右します。
Q.カーブアウト案件の難しさは?
カーブアウトでは、(1)対象事業の独立採算性確立(共通費用の按分・独立後の収益性算定)、(2)共通機能(経理・人事・IT・物流)の分離、(3)システム・契約の移行、(4)人員配置とリテンション、が複雑に絡みます。TSA(移行サービス契約)で売り手から一定期間の業務継続提供を受け、その間に独立体制を構築するのが一般的な進め方です。
Q.中小M&AでもPMIは必要?
必要です。むしろ中小M&Aではキーパーソンリスクが大きいため、PMIの重要性が高まります。創業者・キー営業・キー技術者の離脱は事業価値を即座に毀損するため、リテンション設計・段階的な業務引継ぎ・文化統合は必須です。大企業のような大規模PMIプロジェクトは不要ですが、100日プラン・キー人材リテンション・主要顧客への挨拶・コミュニケーション計画は必ず実行しましょう。
今井 健太郎
監修
今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)
早稲田大学政治経済学部卒。野村総合研究所を経て、2016年に株式会社KI Strategyを設立。M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス(BDD/ITDD)、PMI支援を専門とする。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。プロフィール詳細 →

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