GLOSSARY · DD実務

デューデリジェンス 用語集 — 15語を実務例付きで解説


M&AのDD(デューデリジェンス)に関連する用語を整理します。実務的な進め方はDD・PMI支援もご参照ください。

最終更新: 2026-05-13 / 監修: 今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)

DD(デューデリジェンス)

でぃーでぃー / Due Diligence

買い手が会計士・弁護士・コンサル等を起用して、対象会社の財務・法務・税務・ビジネス・労務・IT等を詳細に調査する買収前精査。簿外債務・偶発債務・許認可リスク・契約上の問題等を発見し、譲渡対価・条件・リスク配分の判断材料とする。中小M&Aでは1〜2ヶ月(小規模で1〜2週間)が標準的な期間。

「基本合意後にDDを実施、財務DD・法務DDを必須で進める」。

BDD(事業デューデリジェンス)

びーでぃーでぃー / Business Due Diligence

対象会社の事業・市場・競合・KSF・成長性・PMIリスクを分析するDD。戦略コンサル・M&Aアドバイザーが実施。市場規模・成長率・顧客分析・サプライヤー分析・主要KPIの妥当性検証・シナジー仮説検証等を行う。費用相場200〜1,000万円、期間3〜6週間。

「BDDで顧客集中度・主要取引先依存度を分析、リスクを評価」。

FDD(財務デューデリジェンス)

えふでぃーでぃー / Financial Due Diligence

対象会社の財務状況を詳細に分析するDD。会計士・税理士が実施。実態純資産・正常収益力(QofE)・キャッシュフロー・運転資本・簿外債務・偶発債務・税務リスクの精査を行う。中小M&Aでは決算書と実態の乖離(役員報酬・私的経費・関連会社取引等)の洗い出しが特に重要。費用相場100〜500万円、期間2〜4週間。

「FDDで未払残業代・退職給付債務未認識を発見、譲渡対価から調整」。

LDD(法務デューデリジェンス)

えるでぃーでぃー / Legal Due Diligence

対象会社の法務状況を精査するDD。弁護士が実施。株主関係・契約関係(CoC条項含む)・許認可・知財・訴訟・労務・規制対応等を網羅的に確認する。費用相場100〜500万円、期間2〜4週間。

「LDDで重要契約のCoC条項を網羅、譲渡前同意取得の対象を特定」。

ITDD

あいてぃーでぃーでぃー / IT Due Diligence

対象会社のIT環境・システム構成・運用体制・サイバーリスク・ライセンス保有状況・IT投資計画を精査するDD。IT専門コンサルが実施。デジタル前提のビジネスや、SaaS・受託開発などのIT業種では必須。費用相場100〜500万円、期間2〜4週間。

「ITDDで基幹システムの保守切れ・サイバーリスク・主要ベンダー依存度を確認」。

税務DD

ぜいむでぃーでぃー / Tax Due Diligence

対象会社の税務リスクを精査するDD。税理士が実施。過去の税務調査履歴、申告書の妥当性、移転価格・国際課税リスク、税務上の繰越欠損金、税効果会計の妥当性等を確認する。FDDの一部として実施することも多い。

「税務DDで過去5年の所得税・法人税申告書をレビュー、リスクを抽出」。

労務DD

ろうむでぃーでぃー / Labor Due Diligence

対象会社の労務リスクを精査するDD。社労士・弁護士が実施。未払残業代、社会保険・労働保険の適正加入、就業規則の整備状況、労使トラブル・係争、ハラスメント案件等を確認する。費用相場50〜200万円、期間2〜3週間。

「労務DDで未払残業代総額1,500万円のリスクを発見、譲渡対価から調整」。

環境DD

かんきょうでぃーでぃー / Environmental Due Diligence

対象会社の環境関連リスクを精査するDD。環境専門会社が実施。土壌・水質汚染、廃棄物処理、PCB・アスベスト等の有害物質、環境関連法令の遵守状況を確認する。工場・倉庫・古い建物を保有する企業では必須。費用相場100〜500万円、期間3〜8週間。

「環境DDで土壌調査を実施、汚染リスクと浄化コストを評価」。

QofE(収益の質分析)

きゅーおぶいー / Quality of Earnings

対象会社の表面的な利益が、どの程度の質と継続性を持つかを分析するFDDの中核作業。一時要因(資産売却益・特別損失)、非経常項目(保険金収入・補助金)、関連会社取引、収益認識の妥当性等を調整し、正常収益力を算定する。

「QofE分析で営業利益から特別要因を控除、正常EBITDA 8千万円を算定」。

VDR(バーチャルデータルーム)

ぶいでぃーあーる / Virtual Data Room

DDで開示する文書を一元管理するオンラインプラットフォーム。アクセス権限・閲覧記録・ダウンロード制御を備え、複数買い手による並行DDや遠隔DDを可能にする。Intralinks、Datasite、Firmex等の専用サービスが広く使われる。

「VDRに財務資料・契約書・許認可資料をアップロードし、買い手DDチームに開示」。

ロックドボックス

ろっくどぼっくす / Locked Box

M&Aの対価決定スキームの一つ。基準日(通常はSPA締結直前の決算日)時点での貸借対照表をベースに対価を確定し、基準日以降の価値変動は売り手の善管注意義務違反等がない限り買い手に帰属させる。クロージング調整不要で取引が単純化される利点があるが、基準日からクロージングまでの期間管理が重要。

「ロックドボックス方式で対価固定、クロージング調整を省略」。

クロージング調整

くろーじんぐちょうせい / Closing Adjustment

クロージング日時点の純資産・運転資本・ネットデットを実測し、SPAで定めた基準値との差額を譲渡対価で調整するスキーム。ロックドボックスの反対概念。価値変動の正確な反映ができる一方、調整実務の煩雑さと事後紛争リスクがある。

「運転資本のクロージング調整で対価±500万円の精算を実施」。

簿外債務

ぼがいさいむ / Off-balance Liabilities

貸借対照表に計上されていない、潜在的または認識漏れの債務。未払残業代、退職給付債務の未認識部分、係争中の損害賠償債務、保証債務、リース債務等。中小企業のFDDで頻繁に発見される論点で、表明保証・補償条項の対象になる。

「FDDで簿外債務2,000万円を発見、譲渡対価から減額調整」。

偶発債務

ぐうはつさいむ / Contingent Liabilities

現時点では発生していないが、将来一定の事象が起これば発生する可能性のある債務。係争中訴訟、保証債務、製造物責任、環境責任、税務上の不確実なポジション等。簿外債務と並んでDDの主要論点。

「製造物賠償の係争中訴訟を偶発債務として注記、補償条項でカバー」。

マネジメントプレゼンテーション

まねじめんとぷれぜんてーしょん / Management Presentation

対象会社の経営層が買い手候補に対して、事業内容・戦略・KPIを直接説明する場。DD初期に実施されることが多く、書類では伝わらない経営の質・コミットメント・人物面の評価機会となる。買い手の経営者と売り手経営者の相性確認の場でもある。

「マネジメントプレゼンテーションで5年中期計画と主要KPIを説明」。

デューデリジェンス に関するよくある質問

Q.中小M&Aで必須のDDは?
財務DD(FDD)と法務DD(LDD)が必須です。FDDでは実態純資産・正常収益力・簿外債務の精査、LDDでは契約のCoC条項・許認可・係争を確認します。案件規模・業種に応じて、ビジネスDD(BDD)・ITDD・労務DD・環境DDを追加します。譲渡価額1〜5億円規模の中小M&Aでは、合計300〜2,000万円程度のDDコストが目安です。
Q.QofE分析と表面営業利益の差はどれくらい出る?
中小企業では役員報酬・私的経費・関連会社取引・一時要因等の影響で、QofE調整後の正常収益力が表面営業利益と20〜50%乖離することは珍しくありません。創業オーナーが過大役員報酬を取っている場合は調整増、節税目的の経費が多い場合も調整増、逆に不採算事業の継続費用は調整減となります。FDDのQofE分析は、年買法・EV/EBITDA倍率法の計算基礎を決める重要工程です。
Q.VDRと従来のデータルームの違いは?
VDRはオンラインで24時間アクセス可能、アクセスログの記録、ダウンロード制限、ウォーターマーク等のセキュリティ機能を備え、複数買い手による並行DDや遠隔DDに対応できます。従来の物理データルームは情報漏洩リスクが高く、現在はほぼVDRに置き換わっています。Intralinks、Datasite、Firmex等の専用サービスが広く使われています。
今井 健太郎
監修
今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)
早稲田大学政治経済学部卒。野村総合研究所を経て、2016年に株式会社KI Strategyを設立。M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス(BDD/ITDD)、PMI支援を専門とする。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。プロフィール詳細 →

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