1. IM(Information Memorandum)とは — ノンネームシートとの違い
IM(Information Memorandum/インフォメーションメモランダム)は、M&A売却プロセスで売り手企業が買い手候補に提示する企業概要書です。20〜40ページ程度のPDFで、会社概要・事業内容・財務情報・市場環境・案件概要・買収シナリオ等を体系的にまとめます。NDA(秘密保持契約)締結後にのみ開示する詳細資料で、ノンネームシートの次段階の資料と位置付けられます。
| 項目 | ノンネームシート | IM |
| 開示タイミング | NDA前(一次案内) | NDA締結後 |
| ページ数 | 1〜2ページ | 20〜40ページ |
| 記載内容 | 業種・地域・規模・譲渡理由・希望価格レンジのみ | 社名・財務詳細・キーパーソン・取引先まで |
| 用途 | 買い手のスクリーニング | 買い手の意向表明判断 |
2. IMの標準構成 9章
- エグゼクティブサマリー:案件概要・売却理由・希望条件の1〜2ページ要約
- 会社概要:沿革・組織図・株主構成・拠点
- 事業概要:製品/サービス・顧客・取引先・販売チャネル
- 市場環境・競合:市場規模・成長性・競合ポジショニング
- 財務情報:過去3〜5期実績+将来3期計画(売上・利益・BS主要項目)
- 強み・特色:他社優位性・参入障壁・無形資産
- 課題・シナジー仮説:自社課題・買い手シナジー候補
- 売却スキーム・条件:株式譲渡/事業譲渡、希望価格レンジ、引継ぎ条件
- マネジメント体制:キーパーソン・引退/継続条件
3. 章別 記載項目の実務ポイント
会社概要・事業概要
沿革は「経営判断の節目」を強調。事業概要は収益再現性が伝わる粒度で記載。「主要事業A 売上3億・粗利率35%」より「BtoB SaaS定額契約/顧客100社/月次解約率0.8%」のほうが買い手の意思決定材料になります。
財務情報
過去3〜5期分の損益計算書サマリー+将来3期予算が標準。中小M&Aでは正常収益力(Normalized EBITDA)の提示が必須で、経営者個人費用・一時要因・関連会社取引等を分離します。BSは現預金・売掛・在庫・固定資産・有利子負債の主要項目のみで十分です。
強み・課題・シナジー仮説
強みは「顧客紹介率70%」「特許3件」「特定商圏シェア40%」等の定量根拠付きで。シナジー仮説は3〜5パターンを列挙し、「同業他社による顧客クロスセル」「異業種による顧客基盤活用」「上場企業によるDXシナジー」等、買い手タイプ別に書き分けるのが効果的です。
4. 買い手はIMのどこを見ているか
買い手の評価ポイントは以下の6項目に集約されます。
- 収益再現性:一時要因を除外した正常収益力
- 顧客集中度:上位顧客への依存度(30%超は警戒シグナル)
- キーパーソン依存度:経営者個人スキル/人脈への依存
- シナジー仮説の具体性:抽象論ではない実現可能性
- 売却理由の合理性:後継者不在・選択と集中・成長加速等
- CoC条項:主要契約のChange of Control条項リスク
「決算書数字だけ載せたIM」は買い手評価が低く、定性情報の充実度がIMの品質を決めます。
5. IM作成でよくある失敗例
- 数字盛り過ぎ:DD段階で実態判明し信頼失墜・価格交渉力低下
- 抽象的すぎる事業説明:買い手がシナジー仮説を立てられない
- 売却理由の不明確化:「事業の選択と集中」だけでは買い手の警戒を招く
- キーパーソン情報の不足:PMI設計不能でM&A後の継続性に不安
- 財務情報の表記不統一:経常利益と営業利益の混同・正常化前後の混在
- 競合・市場の自己中心的記述:「当社の市場シェアNo.1」根拠なし表記
第三者レビュー・セカンドオピニオン取得が品質向上に有効です。詳細はIM作成・セカンドオピニオンサービス参照。
6. IMの作成主体と費用相場
| 作成主体 | 費用相場 | 特徴 |
| M&A仲介会社 | 着手金〜成功報酬に含む | 定型的・スピード重視・大手プラットフォーム連携 |
| FA(ファイナンシャル・アドバイザー) | 50〜300万円(単独) | 売り手専属・条件交渉力強い |
| M&Aコンサル | 100〜500万円 | 事業計画・シナジー分析と一体 |
| 独立系M&Aアドバイザー | 50〜400万円 | 柔軟設計・セカンドオピニオン対応 |
7. セカンドオピニオンの活用
M&A仲介が作成したIMに対して、独立した第三者の専門家(FA・コンサル)が品質・価格設計・売却条件を客観評価するのがセカンドオピニオンです。仲介の双方代理問題(売り手と買い手の両方から手数料を受領)を補完し、売り手の利益最大化に貢献します。
KI Strategyは独立系コンサルティング会社として、IM作成単独依頼・既存IM のセカンドオピニオン両方に対応しています。詳細はIM作成・セカンドオピニオンサービスを参照。
8. 無料IMテンプレート(Word/Excel)DL
KI Strategy提供 IMテンプレート無料DL
本ガイド読者向けに、KI Strategyの実務IMをベースにした無料テンプレートを公開しています。
- Word版IMテンプレート:標準9章構成・約30ページ枠の記入式
- Excel版財務サマリー:過去5期+将来3期予算・正常化調整シート付
- ノンネームシートテンプレート:1ページ要約版
テンプレートを請求する
9. KI Strategyのアプローチ
KI Strategyは独立系コンサルティング会社として、IM作成において以下を重視します。
- 収益再現性の徹底分析:BDD的視点での正常収益力算定
- 買い手タイプ別シナジー仮説:同業/異業種/上場/PEファンドそれぞれの買収シナリオ
- セカンドオピニオン:仲介作成IMの客観評価・売却条件再交渉支援
- DD・PMI設計接続:IM段階でPMI論点を抽出(DD・PMI 100日プラン完全実装ガイド参照)
10. よくある質問(FAQ)
Q.IM(Information Memorandum)とは?
IMはM&A売却プロセスで売り手企業が買い手候補に提示する企業概要書です。20〜40ページ程度のPDFで、会社概要・事業内容・財務情報等を体系的にまとめます。NDA締結後にのみ開示する詳細資料です。
Q.ノンネームシートとIMの違いは?
ノンネームシートは社名を伏せた1〜2ページの案件サマリー、IMはNDA締結後に開示する詳細資料(20〜40ページ)です。詳細は本ガイド第1章参照。
Q.IMの構成・記載項目は?
標準構成は①エグゼクティブサマリー ②会社概要 ③事業概要 ④市場環境・競合 ⑤財務情報 ⑥強み・特色 ⑦課題・シナジー仮説 ⑧売却スキーム・条件 ⑨マネジメント体制 の9章構成です。詳細は本ガイド第2章参照。
Q.IMは誰が作成しますか?費用相場は?
M&A仲介(着手金〜成功報酬に含む)・FA(50〜300万円)・M&Aコンサル(100〜500万円)・独立系M&Aアドバイザー(50〜400万円)が一般的。詳細は本ガイド第6章参照。
Q.買い手はIMのどこを見ていますか?
①収益再現性 ②顧客集中度 ③キーパーソン依存度 ④シナジー仮説の具体性 ⑤売却理由の合理性 ⑥CoC条項リスク。詳細は本ガイド第4章参照。
Q.IM作成でよくある失敗例は?
①数字盛り過ぎ ②抽象的すぎる事業説明 ③売却理由の不明確化 ④キーパーソン情報の不足 ⑤財務情報の表記不統一 ⑥競合・市場の自己中心的記述。第三者レビューが有効です。
Q.無料テンプレートはどこでDLできますか?
本ガイド第8章の
テンプレート請求フォームから、Word版IMテンプレート(標準9章構成)・Excel版財務サマリー・ノンネームシートテンプレートの3点セットを無料で取得できます。
Q.IMにはどこまで詳細を書くべきですか?
NDA締結後の正式IMでは「DD前の買い手意思決定に必要十分な情報」を目安にします。具体的には売上・利益の過去3期数値と将来計画、主要顧客上位5社、従業員数・組織図、主要設備・拠点。個別契約書条項・全顧客リスト等の高機密情報はDD段階での開示が一般的です。
Q.IM作成の所要期間は?
標準は概ね1〜2ヶ月(資料が整っていれば3〜4週間程度)。決算情報が整理されていない中小企業では、財務情報の正常化(経営者個人費用の分離等)に追加2〜4週かかることもあります。
Q.IMとセカンドオピニオンの関係は?
M&A仲介が作成したIMに対して、独立した第三者の専門家がIMの品質・価格設計・売却条件を客観評価するのがセカンドオピニオン。仲介の双方代理問題を補完します。詳細は
IM作成・セカンドオピニオンサービス参照。
監修
今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)
早稲田大学政治経済学部卒。大手シンクタンクを経て、2016年に株式会社KI Strategyを設立。M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス(BDD/ITDD)、PMI支援を専門とする。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。
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