PILLAR · 経営者保証 · 解除と承継

経営者保証の解除と事業承継|ガイドライン特則・事業承継特別保証・2026年新設制度まで実務解説


経営者保証を外す・引き継がないための制度を2026年版で整理。経営者保証に関するガイドライン特則、事業承継特別保証制度、2026年3月新設のモニタリング強化型特別保証、経営者保証改革プログラム、M&A時の保証解除(中小M&Aガイドライン第3版)まで、根拠・要件・窓口を一覧で解説します。

公開: 2026-10-07 / 監修: 今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)

経営者保証が事業承継・M&Aの障害になる理由

中小企業の融資では、経営者が会社の借入の連帯保証人になる「経営者保証」が広く使われてきました。これは資金調達を円滑にする一方で、事業承継やM&Aの大きな障害になります。後継者や買い手が「先代の個人保証まで引き継ぐのか」とためらい、承継・売却が前に進まないケースが少なくないためです。

近年は「経営者保証に依存しない融資慣行」を確立する政策が進み、保証を外す・引き継がないための制度や枠組みが整ってきました。このページは、2026年時点で利用できる経営者保証を外す・引き継がないための制度を一枚に束ね、根拠・対象・要件・窓口・時期で整理する制度マップです。解除の3要件の実務的な進め方は中小M&A・事業承継 完全プロセスガイド、株式譲渡のクロージング時の保証の扱いは株式譲渡の流れに整理しているため、本ページは制度の全体像に絞って解説します。

2026年版・経営者保証を外す制度マップ

経営者保証を外す・引き継がないために活用できる主な制度・枠組みは次のとおりです。

制度・枠組み主な対象・狙い所管・窓口時期
経営者保証に関するガイドライン無保証融資・既存保証の見直しの共通ルール全国銀行協会・日本商工会議所(金融機関)2014年運用開始
事業承継時に焦点を当てた特則後継者に原則として保証を求めない/前経営者の保証解除を促す同上(金融機関)令和元年(2019年)12月公表
事業承継特別保証制度承継予定企業の経営者保証付き借入を無保証に借換え信用保証協会2020年4月創設
経営者保証改革プログラム創業・民間融資・信用保証・ガバナンスの4分野で保証依存を是正金融庁・経済産業省・財務省2022年12月策定・順次施行
モニタリング強化型特別保証制度税理士等と連携した定期モニタリングを条件に無保証の信用保証信用保証協会(中小企業庁)2026年3月開始

制度の要件・保証料・限度額・取扱期間は変更されることがあります。申込前に必ず中小企業庁・金融庁・各信用保証協会の最新情報をご確認ください(出典は末尾)。M&A・第三者承継時の保証の扱いは中小M&Aガイドライン第3版(2024年8月改訂)でも整理されています。

事業承継特別保証制度の要件・申込窓口

事業承継特別保証制度は、経営者保証が事業承継の障害にならないよう、経営者保証が付いている既存の借入を、無保証の保証付き融資に借り換えることを可能にする信用保証協会の制度です。主な要件は、保証申込受付日から3年以内に事業承継を予定する具体的な計画があり、資産超過であるなど一定の財務要件を満たすことです。一定の要件(専門家による確認など)を満たすと保証料の負担が軽減される仕組みもあります。

申込窓口は取引金融機関・信用保証協会です。自社が要件を満たすか、どの借入を対象にできるかは、金融機関や公的相談窓口に早めに相談しておくとスムーズです。相談先の種類は事業承継・M&Aの相談先 完全比較を参照してください。

モニタリング強化型特別保証制度(2026年3月新設)

2026年3月に新設されたモニタリング強化型特別保証制度は、認定経営革新等支援機関(多くは顧問税理士・公認会計士等)と連携して毎月の資金繰りや財務状況を定期的にモニタリング・報告することを条件に、経営者保証に依存しない信用保証を受けられる制度です。経営状況を早期に把握する体制を構築することで、まとまった保証枠(最大2億8,000万円)を無保証で活用できる点が特徴です。

2027年3月末までの申込分については、国が保証料の2分の1相当を補助する措置も設けられています(取扱期間は2029年3月末まで)。定期的なモニタリングの実施・報告という義務を伴う点が従来の保証と異なるため、顧問の税理士・会計士と連携できる体制があるかが活用のポイントになります。最新の要件は中小企業庁の公表資料でご確認ください(出典3)。

経営者保証を外すための3つの要件(概要)

経営者保証に関するガイドラインでは、金融機関が保証を求めない/既存の保証を見直すかを判断する際、おおむね次の3つの状態が重視されます。

これらを満たすほど、新規融資の無保証化や既存保証の解除が進みやすくなります。実際の解除の進め方・金融機関との交渉の流れは中小M&A・事業承継 完全プロセスガイドで詳しく解説しています。

M&A・第三者承継のときの経営者保証

M&A(第三者承継)では、株式譲渡か事業譲渡かなどのスキームによって、経営者保証の扱いが変わります。株式譲渡では会社の借入と保証が原則そのまま残るため、クロージング(決済)までに金融機関と保証の解除・差し替えを調整するのが一般的です。買い手側の信用力に応じて、売り手(前経営者)の保証を外し、必要に応じて買い手側の保証に切り替える、または無保証とする交渉を行います。

中小企業のM&Aの行為規範を定める中小M&Aガイドライン(第3版・2024年8月改訂)でも、経営者保証の扱いは重要な論点として整理されています。仲介・FAの規律やガイドライン第3版の要点は中小M&Aガイドライン第3版の解説を、株式譲渡のクロージング実務は株式譲渡の流れを、スキーム別の違いはM&A・事業承継スキーム比較をあわせてご覧ください。保証の解除は売却条件にも影響するため、早い段階から相談先と方針を固めておくことが重要です。

出典

よくある質問(FAQ)

Q.経営者保証は事業承継のときに必ず引き継がれますか?
必ずしも引き継がれるわけではありません。「経営者保証に関するガイドライン」の事業承継時の特則(令和元年12月)では、一定の要件を満たせば後継者に原則として新たな保証を求めず、前経営者の保証解除も促すこととされています。また事業承継特別保証制度を使えば、経営者保証付きの借入を無保証の融資に借り換えられる場合があります。まずは取引金融機関や公的相談窓口に相談するのが第一歩です。
Q.経営者保証を外すにはどんな条件が必要ですか?
経営者保証に関するガイドラインでは、(1)法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されていること、(2)保証がなくても返済できる財務基盤があること、(3)金融機関への適時適切な情報開示が行われ経営の透明性が確保されていること、の3点が重視されます。これらを満たすほど、新規融資の無保証化や既存保証の解除が進みやすくなります。具体的な進め方は中小M&A・事業承継 完全プロセスガイドを参照してください。
Q.モニタリング強化型特別保証制度とは何ですか?
2026年3月に新設された信用保証制度で、認定経営革新等支援機関(多くは顧問税理士・公認会計士等)と連携して毎月の資金繰り・財務状況を定期的にモニタリング・報告することを条件に、経営者保証に依存しない信用保証(最大2億8,000万円)を受けられるものです。2027年3月末までの申込分には国が保証料の2分の1相当を補助する措置があり、取扱期間は2029年3月末までです。定期的なモニタリング報告の義務を伴う点が従来の保証と異なります。
Q.M&Aで会社を売るとき、私の個人保証はどうなりますか?
スキームによります。株式譲渡では会社の借入と保証が原則そのまま残るため、クロージング(決済)までに金融機関と調整し、売り手(前経営者)の保証を外して買い手側の保証に切り替える、または無保証にする交渉を行うのが一般的です。経営者保証の解除は売却条件にも影響するため、早い段階で相談先と方針を固めておくことが重要です。スキーム別の違いはM&A・事業承継スキーム比較を参照してください。
今井 健太郎
監修
今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)
早稲田大学政治経済学部卒。大手シンクタンクを経て、2016年に株式会社KI Strategyを設立。M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス(BDD/ITDD)、PMI支援を専門とする。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。プロフィール詳細 →

中小M&A・事業承継、まず無料相談から。

事業承継・会社売却・M&Aの最適プロセスをご提案します。売り手側支援・買い手側支援・DD・PMIまで独立系コンサルティング会社として一気通貫。DD・PMI実務は姉妹サイトDD-AXで深掘り対応。
秘密厳守、初回相談無料、全国対応。

無料相談を申し込む 企業価値を3分で査定する