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M&A・事業承継スキーム比較|株式譲渡・事業譲渡・会社分割・株式交換を税務/手続き/リスクで使い分け


M&A・事業承継の4スキーム(株式譲渡・事業譲渡・会社分割・株式交換/株式移転)を、税務・手続き・許認可・簿外債務リスク・必要な決議の観点で横断比較。会社分割と事業譲渡の使い分け、赤字会社の売却スキームまで、売り手・買い手目線で整理しました。

公開: 2026-10-03 / 監修: 今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)

スキーム選択がM&A・事業承継の意思決定の核になる理由

会社や事業を引き継ぐ「方法(スキーム)」は一つではありません。代表的なものに株式譲渡・事業譲渡・会社分割・株式交換(株式移転)があり、どれを選ぶかで税負担、必要な手続き、許認可や契約の引き継ぎ、簿外債務を抱えるリスクが大きく変わります。同じ会社の売却でも、スキーム次第で手取りや実行のしやすさが変わるため、価格交渉と同じくらいスキーム選択が重要です。

このページは、4つのスキームを「税務・手続き・リスク」の観点で横断比較する地域・実務のハブです。株式譲渡の具体的な進め方・必要書類・10ステップは株式譲渡の流れ、個人事業主の事業譲渡や消費税の扱いは個人事業主の事業譲渡、親族内・社内・第三者承継・廃業などの「出口の選択肢」全体は後継者不在の現状と解決策に整理しています。本ページは、その手前にある「どのスキームで実行するか」に絞って解説します。

4スキーム横断比較(税務・手続き・リスク)

中小企業のM&A・事業承継で使われる主なスキームを横断比較すると次のとおりです。

観点株式譲渡事業譲渡会社分割株式交換/株式移転
譲渡の対象株式(会社まるごと)事業(資産・負債を個別に選択)事業に関する権利義務を包括的に承継株式(完全親子会社化)
対価の受領者株主(オーナー個人など)会社(売り手法人)分割会社または株主株主(対価は株式が基本/現金も可)
許認可の引き継ぎ原則そのまま継続(法人格は不変)原則として取り直しが必要法律により承継の可否が分かれる原則そのまま継続
契約の引き継ぎ原則そのまま継続取引先・従業員の個別同意が必要包括承継(債権者保護手続き等あり)原則そのまま継続
簿外債務・偶発債務引き継ぐ(DDが重要)遮断しやすい承継範囲に含まれ得る引き継ぐ
主な決議譲渡制限株式は譲渡承認全部・重要な一部は株主総会の特別決議株主総会特別決議+債権者保護等株主総会特別決議(対価次第で債権者保護)
税務の概要株主の譲渡所得(個人は申告分離20.315%)譲渡法人の損益に算入・消費税が課税適格要件を満たせば課税繰延適格要件を満たせば課税繰延

税率・要件は個別事情で変わります。株式譲渡の税負担と手取りの試算は株式譲渡の流れ、企業価値の算定は企業価値算定の方法、仲介・FAの手数料はM&A手数料の相場を参照してください。出典は会社法・国税庁の各資料(本ページ末尾)。

会社分割の仕組み・税務・必要な決議

会社分割は、会社の事業に関する権利義務の全部または一部を、他の会社に包括的に承継させる組織再編の手法です。承継先が既存の会社なら「吸収分割」、新たに設立する会社なら「新設分割」と呼びます。事業譲渡が資産・契約を一つひとつ移すのに対し、会社分割は分割契約・計画に定めた権利義務をまとめて移せるのが特徴です。

手続きとしては、分割契約(または分割計画)の作成、株主総会の特別決議、債権者保護手続き(官報公告・個別催告)、労働者の保護に関する手続き(労働契約承継法に基づく通知・協議)などが必要です。税務では、一定の適格要件(支配関係の継続・対価の種類など)を満たせば、移転する資産の譲渡損益への課税が繰り延べられます(組織再編税制)。グループ内の事業の切り出し(カーブアウト)や、不採算事業の分離、承継したい事業だけを別法人にして譲渡する、といった場面で使われます。

株式交換・株式移転の仕組みとメリット

株式交換・株式移転は、ある会社を完全子会社(株式を100%保有される会社)にするための組織再編です。既存の会社を完全親会社にするのが「株式交換」、新たに持株会社(ホールディングス)を設立して既存会社をその傘下に置くのが「株式移転」です。対価は親会社株式が基本ですが、現金等を用いることもできます。

メリットは、少数株主が残っていても完全子会社化により100%の支配を実現できること、グループ経営・持株会社体制への移行がしやすいことです。手続きは株主総会の特別決議が基本で、対価の内容によっては債権者保護手続きが必要になります。適格要件を満たせば課税が繰り延べられます。中小企業の第三者承継では株式譲渡・事業譲渡が中心で、株式交換・株式移転は主にグループ内再編や持株会社化の局面で用いられる、という位置づけを押さえておくと選択を誤りません。

会社分割 vs 事業譲渡の使い分け

「特定の事業だけを切り出して引き継ぐ」点は会社分割と事業譲渡で共通しますが、移し方が異なります。

「簿外リスクを避けて必要な資産だけ買いたい」なら事業譲渡、「契約・従業員ごとスムーズに移したい」なら会社分割、というのが大まかな目安です。個人事業主の事業譲渡や消費税の詳細は個人事業主の事業譲渡を参照してください。

許認可の引き継ぎと簿外債務リスクの観点

スキーム選択で見落とされがちなのが、許認可と簿外債務です。

株式譲渡では法人格が変わらないため許認可は原則そのまま継続しますが、建設業・宅地建物取引業・人材派遣業など、株主や役員の変更に伴って届出・審査が必要になる業種があります。事業譲渡では許認可は原則として承継されず、買い手が取り直すのが基本です。会社分割では、許認可ごとに法律で承継の可否が定められているため、対象事業に必要な許認可が承継できるかを事前に確認する必要があります。

簿外債務・偶発債務(未払い残業代、保証債務、係争など)は、株式譲渡や会社分割では引き継ぐ可能性があるため、デューデリジェンス(DD)での洗い出しが重要です。事業譲渡は承継対象を選べるため、こうしたリスクを遮断しやすいのが利点です。DD・評価の実務は企業価値算定の方法や仲介・FAの比較もあわせてご覧ください。

赤字会社・債務超過のときのスキーム

赤字や債務超過の会社でも、事業に価値(取引先・技術・人材・許認可など)があればM&Aは成立し得ます。負債を切り離して優良事業だけを引き継ぐなら事業譲渡や会社分割が選ばれやすく、繰越欠損金の扱いなど税務上の論点も絡みます。一方で、廃業と比較してどちらが有利かは状況によります。廃業との比較は廃業 vs M&A 完全比較、出口全体の整理は後継者不在の現状と解決策を参照してください。

地域でスキームを検討するときの進め方

スキームの最終判断は、税務・法務の専門家を交えて行うのが安全です。まずは自社のおおよその価値感を把握し(無料の企業価値の簡易試算)、そのうえで税理士・公認会計士やM&Aアドバイザーに相談すると、スキーム選択の精度が上がります。相談先の種類と選び方は事業承継・M&Aの相談先 完全比較、全体プロセスは中小M&A・事業承継 完全プロセスガイドに整理しています。お住まいの地域の事業承継・引継ぎ支援センターなど公的窓口の活用も有効です。

出典

よくある質問(FAQ)

Q.株式譲渡と事業譲渡はどう違いますか?
株式譲渡は会社の株式を売買する方法で、会社(法人格)はそのまま残り、許認可や契約も原則として継続します。対価は株主(オーナー個人など)が受け取り、個人株主の場合は譲渡所得に申告分離課税(20.315%)がかかります。事業譲渡は事業に関する資産・負債・契約を個別に選んで売買する方法で、対価は会社が受け取り、許認可は原則取り直し、契約は個別同意が必要で、消費税が課税されます。簿外債務を遮断しやすいのは事業譲渡です。具体的な進め方は株式譲渡の流れを参照してください。
Q.会社分割と事業譲渡はどちらを選ぶべきですか?
特定の事業だけを切り出す点は共通しますが、会社分割は権利義務を包括的に承継するため契約・従業員をまとめて移しやすく(債権者保護手続き等が必要)、事業譲渡は移す対象を個別に選べるため簿外債務を遮断しやすい(許認可の取り直し・消費税課税あり)という違いがあります。簿外リスク回避を重視するなら事業譲渡、契約・従業員ごとスムーズに移したいなら会社分割が目安です。
Q.株式交換は中小企業のM&Aでも使われますか?
株式交換・株式移転は、会社を完全子会社化(株式を100%保有)するための組織再編で、主にグループ内再編や持株会社(ホールディングス)化の局面で使われます。中小企業の第三者承継では株式譲渡・事業譲渡が中心で、株式交換は相対的に限定的です。ただし少数株主が残っている会社を完全に支配下に置きたい場合などに選択肢となります。適格要件を満たせば課税が繰り延べられます。
Q.赤字や債務超過の会社でも売却できますか?
事業に価値(取引先・技術・人材・許認可など)があれば、赤字・債務超過でもM&Aは成立し得ます。負債を切り離して優良事業だけを引き継ぐなら事業譲渡や会社分割が選ばれやすく、繰越欠損金など税務上の論点も関わります。廃業と比較してどちらが有利かは状況によるため、廃業 vs M&A 完全比較もあわせてご確認ください。
Q.スキームによって税金や手取りは変わりますか?
大きく変わります。個人株主の株式譲渡は譲渡所得に20.315%の申告分離課税、事業譲渡は譲渡法人の損益に算入され法人税等の対象で消費税も課税、会社分割・株式交換は適格要件を満たせば課税繰延となります。手取りを左右するため、価格だけでなくスキームと税務を一体で検討することが重要です。株式譲渡の手取り試算は株式譲渡の流れ、価値算定は企業価値算定の方法を参照してください。
今井 健太郎
監修
今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)
早稲田大学政治経済学部卒。大手シンクタンクを経て、2016年に株式会社KI Strategyを設立。M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス(BDD/ITDD)、PMI支援を専門とする。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。プロフィール詳細 →

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