GUIDE · 個人事業主の事業譲渡 完全ガイド 2026年版

個人事業主の事業譲渡 完全ガイド|2026年版 — M&A・税務・契約引継ぎ・許認可・廃業の比較


個人事業主・フリーランスも事業譲渡(M&A)で事業承継が可能です。法人M&Aと違って株式譲渡は使えませんが、屋号・顧客・取引先・備品・在庫・ノウハウを個別資産の譲渡契約で承継できます。本ガイドでは、法人成り後譲渡vs直接事業譲渡の選択、譲渡所得課税の計算、のれん代の妥当な水準、契約・許認可の引継ぎ、屋号承継、廃業との比較、買い手の探し方、補助金活用までを実装レベルで解説。バトンズ・トランビ・relay等の個人M&Aプラットフォーム動向も網羅します。
公開: 2026-07-07 / 監修: 今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)

1. 個人事業主の事業譲渡とは — 法人M&Aとの違い

個人事業主・フリーランスの事業譲渡は、屋号・顧客・取引先・備品・在庫・ノウハウ等を「個別資産の譲渡契約」の形で買い手に譲渡する方法です。法人M&Aの「株式譲渡」は使えませんが、事業譲渡スキームで承継が成立します。

項目個人事業主の事業譲渡法人M&A(株式譲渡)
譲渡対象事業に紐づく個別資産・負債会社(法人格)そのもの
許認可原則として買い手が新規取得原則として継続
契約・取引先個別に承諾が必要原則として継続(CoC条項に注意)
従業員再雇用契約が必要原則として継続
税務資産種別ごと(営業権・備品=総合課税の譲渡所得/棚卸資産=事業所得/土地建物=分離課税)申告分離課税20.315%
負債承継個別合意ベース原則として包括承継

2. 法人成り後譲渡 vs 直接事業譲渡

譲渡額・時間軸によって、法人成りを経由した株式譲渡が有利か、個人事業のまま直接事業譲渡するかが変わります。

項目直接事業譲渡法人成り後譲渡
譲渡所得税率総合課税(営業権等の長期譲渡所得は2分の1課税。最高でも実効約27.5%)申告分離課税20.315%
準備期間3〜6ヶ月法人成り+運営2年+譲渡で約3年
法人成りコスト設立費用(株式会社 登録免許税15万円〜/合同会社6万円〜)・社保加入義務
適合譲渡額500万円以下1,000万円超
許認可承継原則再取得原則継続

1,000万円超の譲渡見込みなら法人成り検討の価値があります。ただし、法人成りには税理士費用・決算費用等のランニングコストもかかるため、税理士・FA・KI Strategy等の専門家との早期相談が重要です。

3. 譲渡所得課税と税務の論点

個人事業主が事業譲渡する場合、譲渡対価は資産種別ごとに異なる税区分が適用されます。

消費税は譲渡側が課税事業者(基準期間の課税売上1,000万円超等)の場合に課税。ただし課税対象は課税資産(のれん・建物・備品・棚卸資産・商標権等)で、土地・売掛金・有価証券は非課税です。

4. のれん代(営業権)の妥当な水準

個人事業主の事業譲渡では「年買法」が多用されます。

例:飲食店で年営業利益300万円 → のれん600〜1,500万円が目安。バトンズ・トランビ等のM&Aマッチングプラットフォーム成約相場も参考になります。

5. 契約・許認可の引継ぎ

許認可

許認可は「個人事業主に紐付く」ものが多く、原則として買い手が新規取得し直す必要があります。

契約

取引先・顧客との契約は事業譲渡契約書で「契約上の地位の移転」を定めますが、相手方の承諾が個別に必要です。賃貸借契約・リース契約・SaaS契約等のCoC(Change of Control)条項にも注意。事前に主要契約のリストアップと譲渡前承諾取得が重要です。

6. 屋号・商標・SNSアカウントの承継

屋号は事業譲渡契約で「商号の譲渡」として承継できます。買い手側の屋号変更届出(個人事業主の場合は所轄税務署)または法人の場合は登記変更が必要。

商標登録されていない屋号は事業譲渡契約のみで承継可能ですが、Googleレビュー・SNSアカウント・取引先名簿への屋号認知度も実質的な無形資産として価値があります。Instagram・X・Googleビジネスプロフィール等のアカウント承継は、各プラットフォームの利用規約に従って譲渡可否が異なるため、譲渡契約書に明記しておくのが安全です。

7. 事業譲渡 vs 廃業の比較

項目事業譲渡廃業
譲渡対価のれん+資産価額ゼロ(資産売却益のみ)
従業員雇用承継可能解雇・退職金支払い
顧客対応サービス継続事業終了
原状回復費不要(買い手承継)賃貸物件の原状回復義務
在庫処分譲渡対象に含む処分損

年営業利益200万円以上ある事業なら事業譲渡を第一選択肢に検討する価値が高いです。詳細は廃業 vs M&A 完全比較参照。

9. 事業譲渡の流れと所要期間

  1. 譲渡準備(決算書・顧客リスト・契約一覧整理)2-4週
  2. 買い手探し・面談 1-3ヶ月
  3. 基本合意 1-2週
  4. デューデリジェンス 2-4週
  5. 事業譲渡契約締結 1-2週
  6. クロージング・引継ぎ 1-2ヶ月

全体で3〜6ヶ月が標準的。営業中の店舗・サービスは引継ぎ期間中の運営継続が前提です。

10. 活用できる補助金

M&A支援機関登録制度に登録された専門家(登録FA・仲介)への手数料が補助対象です。詳細は事業承継・M&A補助金14次公募 採択結果分析参照。

11. KI Strategyのアプローチ

KI Strategyは独立系コンサルティング会社として、個人事業主の事業譲渡においても以下を提供します。

12. よくある質問(FAQ)

Q.個人事業主でも事業譲渡(M&A)はできますか?
はい、可能です。屋号・顧客・取引先・備品・在庫・ノウハウ等を「個別資産の譲渡契約」の形で買い手に譲渡します。法人M&Aの株式譲渡は使えませんが、事業譲渡スキームで承継が成立します。
Q.法人成り後に株式譲渡した方が有利ですか?
案件規模・売却タイミング・買い手の希望によります。1,000万円超の譲渡見込みなら法人成り検討の価値あり、500万円以下なら直接譲渡が一般的です。詳細は本ガイド第2章参照。
Q.個人事業主の事業譲渡の税務は?
譲渡対価は資産種別ごとに異なる税区分が適用されます。営業権(のれん)は譲渡所得(総合課税、50万円特別控除)、棚卸資産は事業所得、土地建物は譲渡所得(分離課税)。詳細は本ガイド第3章参照。
Q.のれん代(営業権)はいくらが妥当ですか?
年買法で営業利益の2〜5年分が目安。業種・地域・顧客集中度で増減し、WEB系・SaaSは5〜10倍まで上振れ、廃業前駆け込み譲渡では1〜2倍程度に落ちる場合も。詳細は本ガイド第4章参照。
Q.契約・許認可は引き継げますか?
許認可は「個人事業主に紐付く」ものが多く、原則として買い手が新規取得し直す必要があります。契約は事業譲渡契約書で「契約上の地位の移転」を定めますが、相手方の承諾が個別に必要。詳細は本ガイド第5章参照。
Q.屋号は引き継げますか?
事業譲渡契約で「商号の譲渡」として承継可能。商標登録されていない屋号も契約のみで承継できますが、Googleレビュー・SNSアカウント等の認知度も無形資産として評価対象です。詳細は本ガイド第6章参照。
Q.事業譲渡と廃業ではどちらが有利ですか?
年営業利益200万円以上ある事業なら事業譲渡を第一選択肢に検討する価値が高いです。詳細は廃業 vs M&A 完全比較参照。
Q.買い手はどこで見つかりますか?
M&Aマッチングプラットフォーム(バトンズ、トランビ、relay)、事業引継ぎ支援センター(無料)、地域金融機関、M&A仲介・FA、独立系コンサル、SNS発信からの紹介等が一般的です。
Q.事業譲渡の流れと所要期間は?
①譲渡準備 ②買い手探し ③基本合意 ④DD ⑤事業譲渡契約 ⑥クロージングの6ステップで全体3〜6ヶ月が標準的。詳細は本ガイド第9章参照。
Q.個人事業主M&Aで活用できる補助金は?
事業承継・M&A補助金の専門家活用枠最大600万円(個人事業主も対象)、事業引継ぎ支援センター(無料)、中小企業活性化協議会等が活用可能。詳細は本ガイド第10章参照。
今井 健太郎
監修
今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)
早稲田大学政治経済学部卒。大手シンクタンクを経て、2016年に株式会社KI Strategyを設立。M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス(BDD/ITDD)、PMI支援を専門とする。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。プロフィール詳細 →

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