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事業承継の統計データ — 後継者不在率・業種別・承継方法別・M&A件数・廃業件数を一次情報で整理


事業承継の現状を「数字」で把握するためのデータハブです。帝国データバンク「全国 後継者不在率動向調査(2025年)」、レコフデータ/MARRのM&A件数、事業承継・引継ぎ支援センター実績、東京商工リサーチの休廃業データなどの一次情報をもとに、全国後継者不在率(50.1%)・業種別ランキング・承継方法別の割合・中小M&A件数・市場規模・廃業件数を整理しました。各数値に出典と調査時点を明記し、調査ごとの定義差・速報値と実績値の違いにも注意を払っています。地域別(都道府県別)の統計は別記事に分けています。
公開: 2026-07-27 / 監修: 今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)

「事業承継 統計」を調べる目的は人によって異なります。経営者であれば自社業種の置かれた立場を知りたい、実務家であればクライアントへの説明根拠が欲しい、メディアであれば引用できる最新数字を探している——いずれの場合も、出典と時点が曖昧な数字は使えません。本記事は、事業承継・後継者不在・中小M&A・廃業に関する主要統計を、一次情報をもとに整理したデータハブです。すべての数値に出典と調査時点(as_of)を付し、調査ごとの定義の違いや、速報値と実績値の区別にも踏み込みます。

なお、本記事は「業種別 × 承継方法別 × M&A件数・市場規模」という軸に内容を絞っています。役割を整理すると、(1) 地域別(都道府県別)の統計47都道府県 事業承継データブックに、(2) 後継者がいない場合の選択肢(5択)後継者不在の解決方法(5つの選択肢と地域別の現状)に、(3) 全国統計の中身と読み方を本記事に、と分担しています。本記事では都道府県別ランキングなど地理軸には深入りしません。業種別の譲渡価格・相場については業種別M&A相場を、企業価値の算定手法は企業価値算定の方法を参照してください。

1. 日本の事業承継・後継者不在の全体像(全国50.1%・7年連続改善)

事業承継の議論の起点になるのが「後継者不在率」です。帝国データバンク(TDB)の「全国 後継者不在率動向調査(2025年)」によると、2025年の全国の後継者不在率は50.1%(前年比△2.0ポイント)。これは7年連続の改善で、調査上の過去最低を更新しました(出典:帝国データバンク「全国 後継者不在率動向調査(2025年)」2025年11月21日公表、PDF p1-2、時点:2025年/調査期間2023年10月〜2025年10月)。

対象となった全国約27万社のうち、後継者が「いない/未定」とされたのは約13.8万社にのぼります。改善が続いているとはいえ、依然として2社に1社が後継者の決まっていない状態にあり、中小企業政策における最重要テーマであり続けています。

後継者不在率の年次推移(2017年66.5% → 2025年50.1%)

後継者不在率は2017年の66.5%(過去最高=ピーク)を境に、継続して低下しています。ピークの2017年と比べると16.4ポイント、5年前の2020年と比べると△15.0ポイントの改善です。改善の背景には、第三者承継(M&A)という選択肢の浸透、公的支援機関の整備、経営者保証ガイドラインの普及などが指摘されています。

調査年全国 後継者不在率前年比
2017年(ピーク)66.5%
2021年61.5%
2022年57.2%△4.3pt
2023年53.9%△3.3pt
2024年52.1%△1.8pt
2025年50.1%△2.0pt

出典:帝国データバンク「全国 後継者不在率動向調査(2025年)」(PDF p2推移グラフ・p9全国計/時点:2025年)。なお、ここでいう「後継者不在」は後継者が「いない」だけでなく「未定」を含むTDBの定義に基づく集計値である点に注意してください。

2. 業種別の後継者不在率ランキング(建設業が最高、金融・保険が最低)

後継者不在率は業種によって大きく異なります。TDB2025年調査の大分類8業種では、建設業の57.3%が最も高く(前年比△2.0)、次いで小売業55.2%、サービス業52.9%、不動産業51.1%と続きます。一方で最も低いのは「その他」38.5%、主要産業では製造業の42.4%が最低で、運輸・通信業45.7%、卸売業46.8%が続きます(出典:帝国データバンク 同調査、PDF p5業種別表、時点:2025年)。

注目すべきは、2011年の調査開始以降で初めて、大分類8業種すべてが60%を下回ったことです。建設業は技能・許認可の継承の難しさを抱えますが、それでも改善基調にあります。製造業についてTDBは、現在のペースが続けば2020年代のうちに40%割れの可能性があると指摘しています。

順位業種(大分類)後継者不在率(2025年)位置づけ
1建設業57.3%最高(前年比△2.0pt)
2小売業55.2%高位
3サービス業52.9%高位
4不動産業51.1%ほぼ全国平均並み
5卸売業46.8%低位
6運輸・通信業45.7%低位
7製造業42.4%主要産業で最低
その他38.5%全体で最低

出典:帝国データバンク「全国 後継者不在率動向調査(2025年)」(PDF p5業種別表/時点:2025年)。

業種中分類で見ると差はさらに大きい

より細かい中分類で見ると、業種間の差はいっそう鮮明になります。最も高いのは『自動車・自転車小売』の62.3%、次いで『職別工事業』61.3%、医療業59.0%。逆に最も低いのは『金融・保険業』の31.4%、次いで『化学工業・石油石炭製品製造』34.8%です(出典:帝国データバンク 同調査、PDF p5・p10中分類表、時点:2025年)。中分類で60%を超えたのは2業種のみで、前年の5業種から減少しました。最高の自動車・自転車小売と最低の金融・保険業の差は約31ポイントにのぼり、自社が属する中分類の動向を把握することが戦略立案の起点になります。

3. 規模別・社長年代別の後継者不在率

業種と並んで差が大きいのが、企業規模と社長の年代です。規模別では、大企業24.9%に対して中小企業51.2%、そのうち小規模企業は57.3%と、規模が小さいほど不在率が高くなります(出典:帝国データバンク 同調査、PDF p2、中小企業基本法の定義に基づく区分、時点:2025年)。

2023年と比べた改善幅は大企業△5.5pt・中小企業△3.7pt・小規模企業△2.9ptで、規模が小さい企業ほど改善が遅れています。後継者対策の体力や情報量の差が、そのまま不在率の差として表れている構図です。

区分後継者不在率(2025年)2023年比 改善幅
大企業24.9%△5.5pt
中小企業51.2%△3.7pt
うち小規模企業57.3%△2.9pt(改善遅い)

出典:帝国データバンク「全国 後継者不在率動向調査(2025年)」(PDF p2/時点:2025年)。

社長年代別:若い経営者ほど後継者は未定

社長の年代別では、当然ながら若い経営者ほど後継者が決まっていません。30代未満で83.2%、60代で35.9%、80代以上では22.2%と、年代が上がるほど不在率は下がります(出典:帝国データバンク 同調査、PDF p3年代別表、時点:2025年)。重要なのは、引退が現実的に視野に入る60代でなお3社に1社、70代でも約4社に1社が後継者未定という点です。前年比では40代△2.3pt・50代△2.1ptと、現役世代での改善が目立ちました。

社長の年代後継者不在率(2025年)
30代未満83.2%(最高)
30代81.3%
40代72.6%
50代58.3%
60代35.9%
70代27.3%
80代以上22.2%(最低)

出典:帝国データバンク「全国 後継者不在率動向調査(2025年)」(PDF p3年代別表/時点:2025年)。

4. 承継方法別の割合と推移(脱ファミリー化のトレンド)

「誰がどうやって事業を継いでいるか」を示すのが、新任社長の就任経緯別構成比です。脱ファミリー化という結論自体は後継者不在の解決方法でも概観していますが、本記事は「速報値と実績値という2つの系列を取り違えない」読み方に主眼を置きます。ここは統計の読み方で最も誤解が生じやすい箇所だからです。

2025年 速報値:内部昇格が同族承継を初めて上回る

TDBの2025年速報値(直近1年の新任社長ベース)では、内部昇格36.1% > 同族承継32.3% > M&Aほか20.6% > 外部招聘7.6% > 創業者3.4%という構成でした。速報値の段階で、内部昇格が長年首位だった同族承継を初めて上回っています(出典:帝国データバンク 同調査、PDF p5本文・速報値、時点:2025年・速報値)。

就任経緯構成比(2025年 速報値)
内部昇格36.1%(最多)
同族承継32.3%
M&Aほか20.6%
外部招聘7.6%
創業者3.4%

出典:帝国データバンク「全国 後継者不在率動向調査(2025年)」(PDF p5本文・速報値/時点:2025年・速報値)。なお「M&Aほか」はTDBの注記により、買収・出向・分社化の合計を指します。後述するレコフの「事業承継M&A 920件」とは定義も母数も全く異なる別概念であり、単純に並べて比較することはできません。

実績値の推移:脱ファミリー化が確実に進む

一方、確定した実績値の推移では、2024年実績で同族承継35.7%・内部昇格35.0%と、両者の差はわずか0.7ポイントまで縮まりました(前年調査の1.6ポイント差から縮小)。M&Aほか(実績値)は2024年で19.2%と、2023年比△0.2ポイントで、前年割れは2020年以来4年ぶりです(出典:帝国データバンク 同調査、PDF p5-6推移グラフ=実績値、時点:2024年・実績値)。

つまり、確定済みの実績ではまだ同族承継がわずかに首位を保っていますが、その差は急速に縮小しており、速報値段階では内部昇格が逆転した、という状況です。TDB自身も「速報値段階で内部昇格が上回った/2025年実績でも上回る可能性」と慎重な表現をしています。いずれにせよ、血縁に依存しない「脱ファミリー化」のトレンドは明確で、中小企業でも「家業を継ぐ」から「最適な後継者を選ぶ」時代への移行が進んでいます。記事や資料で引用する際は、速報値(直近1年の新任社長ベース)と実績値(推移グラフ)を取り違えないことが最大のポイントです。首位がどちらかという結論が逆になってしまうためです。

5. 中小M&Aの件数・成約・市場規模の推移

承継の出口として存在感を増す第三者承継(M&A)について、件数と市場規模を見ていきます。ここでも調査主体ごとに対象範囲が異なる点に注意が必要です。

日本企業全体のM&A件数(レコフ/MARR)

レコフデータの集計をもとにしたMARR Onlineの「2024年のM&A回顧」によると、2024年の日本企業のM&A件数は4,700件(前年比+17.1%)で当時の過去最多。さらに2025年は5,115件・35.7兆円とM&A件数・金額とも過去最多を更新しました(レコフ/MARR、2025年回顧)。従来の最多は2022年4,304件、2023年4,015件でした。内訳はIN-IN(国内同士)3,702件、IN-OUT(日本企業が海外を買収)665件、OUT-IN(海外企業が日本を買収)333件。取引金額は19.6兆円(+8.0%)で過去2番目の規模でした(出典:レコフデータ/MARR Online「2024年のM&A回顧」、時点:2024年1-12月)。

ただしこの4,700件は、中小企業の事業承継だけでなく、上場企業のグループ内再編なども相当数含む「全件」ベースである点に留意が必要です。中小の事業承継M&Aに絞った数字とは、そもそも母集団が異なります。

事業承継型M&Aに絞った件数(920件)

オーナー・経営者の株式売却型に絞った「事業承継M&A」は、2024年で920件(前年比+31.4%)と過去最多と報じられています(出典:レコフデータ集計を報じた報道〔高知新聞・日経、2025年〕、時点:2024年1-12月)。これはレコフ一次ページの原文ではなく報道経由のレコフ集計値であるため、「報道が伝えるレコフ集計値」として扱うのが適切です。920件は株式売却型に絞った集計とされ、前掲の全件4,700件とは集計範囲・定義が異なるとみられますが、4,700件の内数なのかどうかという母集団関係は原典で明示されていません。両者を足し引きしたり、一方を他方の一部と断定したりはできない、と理解するのが安全です。

事業承継・引継ぎ支援センターの相談・成約実績

公的支援の中核である事業承継・引継ぎ支援センター(中小機構)の令和6年度(2024年度)実績では、相談者数は23,000者超(開設以来の累計15万者超)。うち第三者承継(M&A)の相談者数は16,045者(累計約12万者)でした(出典:中小機構プレスリリース「令和6年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績」2025年5月30日、PDF p1・p3-4、時点:令和6年度)。なお令和6年度の新規相談者数は23,540件(前年比△0.8%)で、センター事業開始以来初めて減少したと公表されています(出典:同プレスリリース/PR TIMES)。

第三者承継(M&A)の成約件数は令和6年度2,132件で過去最高を更新(累計12,306件)。後継者人材バンクの成約は106件(過去最高、累計435件)、親族内承継の支援完了件数は1,695件(R3:1,043/R4:1,270/R5:1,558と着実に増加、累計5,566件)でした(出典:中小機構 同プレスリリース、PDF p3・p5資料5、時点:令和6年度)。

指標件数調査主体・時点
日本企業全体のM&A件数4,700件(過去最多)レコフ/MARR・2024年
 うちIN-IN(国内同士)3,702件レコフ/MARR・2024年
M&A取引金額19.6兆円(過去2番目)レコフ/MARR・2024年
事業承継型M&A(株式売却型)920件(+31.4%・過去最多)報道が伝えるレコフ集計値・2024年
センター 第三者承継 成約件数2,132件(過去最高)中小機構・令和6年度
センター 第三者承継 相談者数16,045者中小機構・令和6年度
センター 親族内承継 支援完了1,695件中小機構・令和6年度

出典:レコフデータ/MARR Online「2024年のM&A回顧」(時点:2024年)、報道〔高知新聞・日経、2025年〕、中小機構プレスリリース(2025年5月30日・令和6年度)。集計主体・定義・年度区分がそれぞれ異なるため、これらの件数は単純に足し合わせたり比較したりできません(詳細は第7章)。

譲渡企業の規模・業種分布:売り手の約7割は売上1億円以下

センターの第三者承継で成約した譲渡企業の売上規模を見ると、3,000万円以下が36.1%、3,000万円超〜1億円以下が31.9%で、合計すると約7割が売上1億円以下の小規模事業者です。1億円超〜5億円以下が27.0%、5億円超〜10億円以下2.9%、10億円超〜50億円以下1.8%、50億円超0.3%と続きます(出典:中小機構 同プレスリリース、PDF p4資料3、時点:令和6年度)。

売上規模構成比業種構成比
3,000万円以下36.1%サービス業・その他27.3%
3,000万円超〜1億円以下31.9%製造業19.5%
1億円超〜5億円以下27.0%卸・小売業18.1%
5億円超〜10億円以下2.9%宿泊・飲食サービス業14.6%
10億円超〜50億円以下1.8%建設業12.2%
50億円超0.3%医療・福祉/運輸業5.3%/3.0%

出典:中小機構プレスリリース「令和6年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績」(PDF p4資料3/時点:令和6年度)。小規模事業者の譲渡が中心であることは、中小M&Aの「売り手探索」の現実を理解するうえで重要なデータです。買い手側・売り手側の実務については売り手側の支援M&Aプラットフォーム比較も参照してください。

6. 休廃業・解散件数の推移と「黒字廃業」問題

後継者不在率が改善しても、廃業の数は別の動きを見せています。東京商工リサーチ(TSR)によると、2024年の休廃業・解散件数は62,695件(前年比+25.9%)で、初の6万件超・2000年の調査開始以来の過去最多となりました(2023年は49,788件)(出典:東京商工リサーチ「2024年の『休廃業・解散』企業」TSRデータインサイト1200854、時点:2024年)。

背景にあるのは高齢代表者の退出加速です。休廃業企業の代表者は60代以上が87.6%(過去最高)、平均年齢は72.6歳、業歴50年以上が13.0%を占めます。後継者不在率という「ストック」の指標が改善しても、高齢経営者が事業をたたむ「フロー」の動きは加速しているという二面性に注意が必要です。

「黒字廃業」:約半数が直前期黒字のまま廃業

深刻なのが「黒字廃業」です。2024年に休廃業した企業の直前期の黒字率は51.5%、赤字率は48.5%(過去最悪、前年比0.9pt悪化)。2023年の黒字率52.4%から低下したものの、依然として約半数が黒字のまま廃業しています(出典:東京商工リサーチ 同調査、時点:2024年)。黒字率は2021年以降に初めて60%を割り込み、調査開始時(2000年)の70%前後から低下しています。事業を続けられる体力があっても、後継者がいないために廃業を選ぶケースが相当数あることを示す数字です。

指標2024年2023年
休廃業・解散件数62,695件(過去最多)49,788件
直前期 黒字率51.5%52.4%
直前期 赤字率48.5%(過去最悪)47.6%
代表者60代以上の比率87.6%(過去最高)

出典:東京商工リサーチ「2024年の『休廃業・解散』企業」(TSRデータインサイト1200854/時点:2024年)。なお、中小企業庁の2025年版中小企業白書は同種の黒字割合を約51.1%と記載しており(集計差)、休廃業・解散の調査は帝国データバンクも別途実施しているなど、調査主体によって定義・対象が異なり数値は一致しません。引用する際は調査主体を明記してください。

参考:後継者難倒産

後継者難を直接の原因とする倒産(後継者難倒産)は、2025年1-10月で425件(前年同期比△6.6%)でした。過去最多は2023年の564件(通年)です。後継者難倒産のうち、代表者の病気・死亡を起因とするものが194件と全体の4割超(約45%)を占めます(出典:帝国データバンク「全国 後継者不在率動向調査(2025年)」PDF p8参考データ、時点:2025年1-10月)。廃業(自主的な退出)と倒産(債務超過等による破綻)は別概念であり、後継者難倒産は廃業件数とは区別して読む必要があります。

7. データの正しい読み方と出典一覧

本記事で扱った統計は、調査主体ごとに対象も定義も異なります。異なる調査の数字を単純に足し合わせたり、年次の異なる数字を最新と誤認したりはできません。数字を引用・比較する際は、次の4点を必ず確認してください。

これらの理由から、本記事ではすべての数値に出典と時点を併記しています。引用の際は、各数値の出典・調査時点とあわせてご確認ください。

8. 今後の見通し:2025年問題と統計の方向性

事業承継統計の文脈で繰り返し参照されるのが「2025年問題」です。中小企業庁の試算では、2025年までに70歳を超える中小・小規模事業者の経営者は約245万人にのぼり、そうした高齢経営者を擁する企業のうち約127万社が後継者未定になると見込まれていました(出典:中小企業庁試算/中小企業白書〔複数年版で引用〕、時点:2025年・試算ベース)。「245万人」は経営者(人)の数、「約127万社」は後継者未定とされる企業(社)の数で、単位の異なる数字です。245万人の半数がそのまま127万社になるわけではない点に注意してください。この数字は2017年前後の推計を各年版の白書が継承したもので、最新の実測値ではなく「試算・見通し」である点も踏まえる必要があります。

足元の統計は、後継者不在率(50.1%)の改善、第三者承継M&A・センター成約の過去最高更新といった前向きな動きと、休廃業件数の過去最多・黒字廃業の高止まりという負の動きが同時に進行しています。後継者対策が「間に合った企業」と「間に合わなかった企業」の二極化が、数字に表れている局面と読むことができます。自社の業種・規模・経営者年代がどの位置にあるかを本記事のデータで把握したうえで、早期の選択肢検討につなげていただくのが、統計を「使う」最も実践的な読み方です。地域別の状況は47都道府県 事業承継データブック、後継者がいない場合の具体的な選択肢は後継者不在の解決方法もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q.2025年の全国の後継者不在率は何%ですか?
帝国データバンクの「全国 後継者不在率動向調査(2025年)」によると、2025年の全国後継者不在率は50.1%です(前年比△2.0ポイント、7年連続の改善で調査上の過去最低)。対象約27万社のうち、後継者が『いない/未定』とされたのは約13.8万社です。出典:帝国データバンク(2025年11月21日公表、PDF p1-2)。
Q.後継者不在率はどのように推移してきましたか?
2017年の66.5%(過去最高=ピーク)を境に低下が続いており、2021年61.5%→2022年57.2%→2023年53.9%→2024年52.1%→2025年50.1%と推移しています。ピークの2017年比で16.4ポイント、5年前(2020年)比で△15.0ポイントの改善です。出典:帝国データバンク「全国 後継者不在率動向調査(2025年)」(PDF p2推移グラフ・p9)。
Q.後継者不在率が最も高い業種・低い業種はどこですか?
大分類8業種では建設業が57.3%で最も高く、次いで小売業55.2%、サービス業52.9%、不動産業51.1%。主要産業では製造業の42.4%が最低で、運輸・通信業45.7%、卸売業46.8%が続きます。さらに細かい中分類では『自動車・自転車小売』62.3%が最高、『金融・保険業』31.4%が最低です。2025年は調査開始以降初めて大分類8業種すべてが60%を下回りました。出典:帝国データバンク 同調査(PDF p5・p10、時点2025年)。
Q.事業承継の方法別の割合(同族承継・内部昇格・M&Aなど)はどうなっていますか?
承継方法別構成比には速報値と実績値の2系列があります。2025年の速報値(直近1年の新任社長ベース)は、内部昇格36.1%>同族承継32.3%>M&Aほか20.6%>外部招聘7.6%>創業者3.4%で、速報値段階で内部昇格が同族承継を初めて上回りました。一方、確定した実績値では2024年実績で同族承継35.7%・内部昇格35.0%とわずかに同族承継が首位を保っています。首位が逆になるため、引用時は速報値と実績値を取り違えないことが重要です。出典:帝国データバンク 同調査(PDF p5-6)。
Q.日本のM&A件数・中小M&Aの市場規模はどのくらいですか?
まず注意点として、全件ベースと事業承継型は別集計です。レコフデータ/MARR Onlineの『2024年のM&A回顧』によると、2024年の日本企業のM&A件数(上場企業の再編なども含む全件ベース)は4,700件(前年比+17.1%、過去最多)、取引金額は19.6兆円(過去2番目)でした。オーナー株式売却型の事業承継M&Aに絞ると、報道が伝えるレコフ集計で2024年920件(+31.4%、過去最多)です。両者は集計範囲・定義が異なり、920件が4,700件の内数かどうかは原典で明示されていません。出典:レコフ/MARR(2024年)、報道〔高知新聞・日経、2025年〕。
Q.事業承継・引継ぎ支援センターの相談・成約件数は?
中小機構によると、令和6年度(2024年度)の相談者数は23,000者超(累計15万者超)。うち第三者承継(M&A)の相談者数は16,045者でした。第三者承継の成約件数は2,132件で過去最高を更新(累計12,306件)、後継者人材バンク成約は106件、親族内承継の支援完了は1,695件です。出典:中小機構プレスリリース(2025年5月30日、PDF p1・p3-5、令和6年度)。
Q.M&Aで会社を売る中小企業はどのくらいの規模ですか?
事業承継・引継ぎ支援センターの第三者承継で成約した譲渡企業の売上規模は、3,000万円以下が36.1%、3,000万円超〜1億円以下が31.9%と、合計で約7割が売上1億円以下の小規模事業者です。業種別ではサービス業・その他27.3%、製造業19.5%、卸・小売業18.1%、宿泊・飲食14.6%、建設業12.2%と続きます。出典:中小機構プレスリリース(PDF p4資料3、令和6年度)。
Q.廃業(休廃業・解散)件数はどう推移していますか?
東京商工リサーチによると、2024年の休廃業・解散件数は62,695件(前年比+25.9%)で、初の6万件超・2000年の調査開始以来の過去最多となりました(2023年は49,788件)。代表者60代以上が87.6%(過去最高)、平均年齢72.6歳と、高齢経営者の退出が加速しています。なお、休廃業の調査は帝国データバンクも別途実施しており件数の定義・対象が異なります。出典:東京商工リサーチ(TSRデータインサイト1200854、2024年)。
Q.「黒字廃業」とは何ですか?どのくらいありますか?
黒字廃業とは、直前期が黒字であるにもかかわらず会社をたたむことを指します。東京商工リサーチによると、2024年に休廃業した企業の直前期の黒字率は51.5%(赤字率48.5%=過去最悪)で、約半数が黒字のまま廃業しています。黒字率は2021年以降に初めて60%を割り込み、調査開始時(2000年)の70%前後から低下しています。なお中小企業白書2025年版は同種の指標を約51.1%と記載しており、集計差があります。事業を続けられる体力があっても後継者がいないために廃業するケースが相当数あることを示します。出典:東京商工リサーチ(2024年)。
Q.事業承継の統計を引用するとき、どんな点に注意すべきですか?
調査主体ごとに(1)対象母集団(TDBは約27万社のCCRベース、TSRは休廃業企業、レコフは公表M&A全件、センターは公的窓口の利用実績)、(2)定義(後継者『不在』は『未定』を含む、M&Aの範囲)、(3)年度区分(暦年か年度か)、(4)速報値か実績値か、が異なります。これらが違うため、異なる調査の数値を単純に足し合わせたり比較したりはできません。各数値に必ず出典と調査時点を併記することをおすすめします。
Q.『2025年問題』で言われる127万社とは何の数字ですか?
中小企業庁の試算で、2025年までに70歳を超える中小・小規模事業者の経営者が約245万人にのぼり、そうした高齢経営者を擁する企業のうち約127万社が後継者未定になると見込まれていた数字です。『245万人』は経営者(人)、『約127万社』は後継者未定とされる企業(社)で単位が異なり、245万人の半数がそのまま127万社になるわけではありません。2017年前後の推計を各年版の中小企業白書が継承したもので、最新の実測値ではなく『試算・見通し』として扱うのが適切です。足元では後継者不在率の改善と休廃業件数の過去最多が同時に進んでいます。出典:中小企業庁試算/中小企業白書(複数年版)。
今井 健太郎
監修
今井 健太郎(株式会社KI Strategy 代表取締役)
早稲田大学政治経済学部卒。大手シンクタンクを経て、2016年に株式会社KI Strategyを設立。M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス(BDD/ITDD)、PMI支援を専門とする。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。プロフィール詳細 →

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